ランドセル祓いもある「鎮守氷川神社」の歴史やご利益について禰宜さんに聞いてみた!

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「来年から、なにごともなく小学校へ通えるかな?」「受験はうまくいくかな?」ちゃんと準備をしたり、勉強していても、ふと不安になるときがありますよね。

学校に関することだけでなく、子どもも大人も大きな力に気持ちを支えてもらいたいときがあります。

そんなときは、神社を訪れてみてください。

美しい境内に身を寄せ、神さまに手を合わせれば、不安な心が少し軽くなるかもしれません。

今回は埼玉県川口市にある「鎮守氷川神社」の禰宜(ねぎ) 鈴木智之さんにお話を伺いました。

  1. 700年以上の歴史がある鎮守氷川神社
  2. 身につける人を守る「ランドセル祓い」、頑張る背中を押す「合格祈願」
  3. 四季折々、身近で楽しめる芸術「御朱印」
  4. 参拝にルールはない「神社を楽しんでください!」

700年以上の歴史がある鎮守氷川神社

「鎮守氷川神社」

ー本日はよろしくお願いします。まず、鎮守氷川神社はどのような神社か教えてください。

鈴木 智之さん(以下、鈴木):鎮守氷川神社は、埼玉県川口市に鎮座している村社(そんしゃ)です。

「村社」というのは村のお社のひとつで、地域に根ざしている小さなお社、村の鎮守さまのことをいいます。

いわゆる明治神宮などの、大きくて沢山の崇敬者がいる神社ではありません。

氷川神社というのは、昔の武蔵の国(今の東京都・埼玉県・神奈川県の一部)を中心に300社ほどあり、一番の大元は埼玉県の大宮区にある氷川神社です。

その大宮区にある氷川神社の直系とされているのが、川口市にある「鎮守氷川神社」なんです。

初詣を始め、一年を通じて多くのご参拝をいただいていることから、大社ではないのですが「小さな大社」といわれています。

現在の社殿は、昭和61年に氏子崇拝者の皆様が、唐破風を付けた「流造(ながれづくり)」という建築様式を用いて建立しました。

「鎮守氷川神社」禰宜の鈴木さん

ー続いて「鎮守氷川神社」の歴史についてお聞かせください。

鈴木:歴史については、実は正式な資料が震災や戦争のときに焼失してしまっていて、詳細な年号などの資料は残っていません。

ただ、風土記など現存の資料や、「棟札」という建築の記録を記す札は残っています。

一番古い棟札は700年前のものになります。ですので、少なく見積もっても、当社は700年以上の歴史があるということになります。

ー室町時代から続く、歴史のある神社なんですね。

鈴木:そうですね。神社というのは、昔はコミュニティの中心だったんです。

たとえば日照りが続いたり、雨が続いたりすると農作物が不作になって、村の人たちが食べていけなくなってしまいますよね。そんなとき、人々は神社に手を合わせました。

また、村の決めごとについて話し合う場所もお社でした。

そうやって何かあればお社に集まって、話し合いをしたり祭りの準備をしたりしながら、村の決まりや習慣などを若い人に伝えていったんですね。

「社会」という言葉は「社」で「会う」の組み合わせでできています。神社はコミュニティの始まりなんです。

そのようにして建てられた神社が、こうして今も残っているわけです。

「鎮守氷川神社」社殿

ーご祭神についても教えてください。

鈴木:ご祭神は素盞鳴命(スサノオノミコト)と櫛稲田姫命(クシイナダヒメノミコト)の夫婦神をお祭りしています。

これは全国300社ある氷川神社に共通していることです。

サノオノミコトがヤマタノオロチを退治して、奥さんのクシイナダヒメノミコトを救ったという神話があります。

そこから「厄除け」「除災招福」、また主祭神が夫婦神であることから「安産」「縁結び」「家内安全」のご利益があるとされています。

そのほかにも、社殿を取り囲むように小さなお社が8社建っています。

これは村に住む人たちが「この村には学問の神さまが必要だ」「病気の神さまもいたほうがいい」と、各地からさまざまな神さまを分けてもらい、ここにお迎えして村を守ってもらっていたことに由来します。

身につける人を守る「ランドセル祓い」、頑張る背中を押す「合格祈願」

「鎮守氷川神社」

ーほかにはどのようなご利益がありますか?

鈴木:先ほどお話ししたとおり、神話ではスサノオノミコトがヤマタノオロチという8個頭がある大蛇を退治しました。

海外の神話だと、絶対的な力を持つ神が一気に倒してしまうのですが、日本の神話では面白いことに、神さまはまず作戦を立てます。

8個の頭を同時に相手するのは大変だから、一つひとつ分けるために鳥居を8個置き、その先にお酒を置いてヤマタノオロチの頭をおびき寄せます。

酒を飲むために頭はひとつずつに分かれ、酒を飲んだあと酔っ払い寝てしまいます。その隙を突いて、スサノオノミコトは頭を一つひとつ倒していくのです。

この神話が「頭を使いながら、ひとつのことを解決していく」ということを表しており、「学業成就」「合格祈願」のご利益に繋がっています。

ちなみに、大蛇を退治したあとに読まれた和歌が、日本で初めての和歌であったということから、「和歌の神さま」「勉強の神さま」ともいわれているんですよ。

「鎮守氷川神社」

ー改めて神話を聞くと面白いですね。ご祈祷にある「ランドセル祓い」について教えてください。

鈴木:ランドセル祓い」については、基本的に災除けのお祓いがメインになります。

ランドセルが子どもを守ってくれるように、交通安全や行き帰りの無事を祈願します。

日本には「八百万の神」という、木や草、スマートフォンに至るまで、すべてのものに神が宿っているという考え方があります。

ですので、子どもたちには「これから6年間使うランドセル、そして教科書や道具、鉛筆1本まで大事に使わなければいけないよ」ということをお伝えしています。

ちなみに、うちではないのですが、私がお預かりしている神社でペットのご祈願をしているところもあるんですよ。

みなさんそれぞれに大切に思う人、家族、物があって、それに気持ちを込めたいと思っているんです。

現在、「交通安全祈願」というと、車をお祓いするのが一般的ですが、昔は馬をお祓いしていました。

そういうふうに物や事でなく、人の気持ちに寄り添う文化が続いているんですね。

「鎮守氷川神社」合格祈願

ー学生が「合格祈願」で訪れることもありますか?

鈴木:はい、あります。「合格祈願」「学業成就祈願」ともに同じことがいえるのですが、自分に打ち勝つというところが一番大事です。

神さまに祈ればなんでも叶うわけではないんです。

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるように、ベストを尽くしてやれることをやった後、試験で全力を出すことを誓うのが「合格祈願」の側面でもあります。

また、神様は勉強の成果を見守り、不安を取り除いて背中を押してくれるという役割もあります。

アメリカがアポロを打ち上げるときに「あれもやった、これもやった。あとは神に祈るだけだ」といって打ち上げのボタンを押したという話があります。

宮本武蔵は「神仏を尊びて、神仏に頼らず」という言葉を残しています。

そういった気持ちで、参拝する方を見守るというのが「合格祈願」です。

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四季折々、身近で楽しめる芸術「御朱印」

「鎮守氷川神社」御朱印帳

ー御朱印について詳しくお聞かせください。

鈴木:当社の御朱印には、スサノオノミコトのシルエットの印を押しています。季節ごとに色が異なるのが特徴です。

春は緑色で夏は青色、秋は赤で冬は紫色。4色おそろいの方には、特別な印や記念のお品をお渡ししています。

というのも、参拝してくださる方に神さまのことを知ってほしい、1年間を通して神社に来て欲しいという気持ちがあるからなんです。

ぼくは小さいころからスサノオノミコトが好きだったんですよ。女の人を助けるために大蛇を退治するなんて、ヒーローじゃないですか。

そんなスサノオノミコトをシルエットにしたり、季節ごとに印の色を変えたりすることで、神さまについて知ってもらい、四季折々の神社を楽しんでもらいたいと思っています。

参拝された方々から「スサノオの印をください」と仰っていただけるので、一定の効果はあったと思います。

「鎮守氷川神社」横尾忠則デザイン御朱印帳

ー御朱印帳にはどのようなものがありますか?

鈴木:御朱印帳は、島根県の石見地方に伝わる石見神楽をモチーフにしたものと、美術家の横尾忠則さんがデザインした「スサノオ」というポスターをベースに作成したものの2種類をご用意しています。

石見神楽の御朱印帳は、ぼくの小さいころの思い出を反映しています。

母が島根県出身なのですが、夏祭りになるとどこでも石見神楽でヤマタノオロチ退治の神話を舞っていたんです。それがとてもかっこよくて。

それがぼくの原点ですね。だから御朱印帳を作ろうということになったとき、そのかっこよさをみなさんに伝えたくて、石見神楽をモチーフにしたんです。

横尾忠則さんの御朱印は、横尾さんの絵を御朱印帳にしたいという話が持ち上がり、ご本人に相談したら快諾してくださって製作にいたりました。

その御朱印帳を西陣織でつくることになったのですが、色合いを表現するのがたいへん難しく、試行錯誤のうえ普通の西陣織の1.5倍の密度で織れる機械を使用しています。

スサノオの御朱印帳は、特別な機械を使用しているため量産できず、月に100冊限定でお出ししています。

「鎮守氷川神社」横尾忠則奉納作品

ー横尾忠則さんの作品が奉納された経緯をお聞かせください。

鈴木:当神社の宮司が、横尾忠則さんと対談したときに、2人が意気投合したことがきっかけなんです。

2人は知り合ってから、友人としてご飯を食べに行ったり、芸術作品を見に行ったりして親睦を深めていきました。

以前から宮司には、神社は伝統文化の宝庫であるとともに、未来を写す鏡的な役割を果たしていくべき、という想いがあったんです。

そして、横尾忠則さんには未来投影的な力を感じる作品を作っていくというコンセプトがありました。そこが当神社とリンクしたんですね。

平成6年10月20日にここの建物が竣工を迎えたとき、その竣工にあわせて絵を奉納していただきました。

その後、平成8年に吉兆というポスター作品の第1弾が奉納されて、平成10年には御朱印帳のもとになった第2弾の「スサノオ」というポスターを奉納していただきました。

ご参拝の折には、ぜひ横尾さんの作品をご観覧ください。

参拝にルールはない「神社を楽しんでください!」

鎮守氷川神社の年中行事

ー「鎮守氷川神社」の主な年中行事について教えてください。

鈴木:年中行事としては、1月1日に「元旦祭」「初詣」、1月15日に「どんど焼き」「祈願串焼納祭」があります。

次に3月1日に「としごいのまつり」といわれている、その年の農業や商業、工業の繁栄を祈る「祈年祭」があります。

5月初めには「お田植え祭」、7月1日には「夏越大祓祭」という神事があります。

そして9月中旬に「抜穂祭」という稲刈りの神事があり、10月20日には神社で一番大きなお祭り「例大祭」を開催します。

10月11月には「七五三詣」の方が多くみえます。12月1日には
その年の実りに感謝する神事「新嘗祭」をおこないます。

大晦日の12月31日には、「
師走大祓祭」という神事があります。

ー1年を通していろいろな行事があるんですね。お参りする際のルールはありますか?

鈴木:お参りに特にルールはありません。困ったときや嬉しいとき、どんなときでも思い思いに気軽に参拝していただきたいです。

「その道を学ぶことの大切さを知る人は、知らない人より優れている。けれど知っている人もその道を『好きな人』には及ばない、しかし好きな人も『楽しむ人』には及ばない」

こんな言葉がありまして、作法やルールよりも、まず「気持ち」が大事です。

好きになって楽しめば、「きちんとお参りするにはどうしたらいいんだろう」と思うようになりますので、それでいいと思います。

知識があるのはよいことなのですが、知識でガチガチにしてしまうと、神社に参拝することへのハードルが高くなってしまうので。

それにしっかりした作法で参拝しないと「神さまのバチが当たる」なんていいますけど、神さまの心はそんなに狭くありません。

気持ちよく参拝していただき、背筋をピンとして笑顔で帰ってもらうのが一番だと思っています。

「鎮守氷川神社」御神木

ー今後の展望についてお聞かせください。

鈴木:暗い顔をして神社に参拝に来られた方には、笑顔で帰ってもらいたい。そして笑顔で来られた方には、さらに幸せな気持ちになって帰ってもらいたい。

そんな場所をこれからも作っていきたいですね。

ぼくたちは神さまではなく、人と神さまの間を取り持つ役目を持っています。

これからも、気持ちよく参拝してもらうために境内の環境を整えることが大切だと思っています。

もっと全体的な話をすると、ここの神社をひとつの円にたとえるとします。

その周りに、神社を大切に思ってくれている地元の方々の円がある。ほかにも鎮守氷川神社の崇敬者やファンの方がつくる円があります。

そんなふうに神社を中心にさまざまな円がひろがり集まって、全国に広がっていけばいいですね。

日本は大和の国、大きな和(輪)と書きますよね。字のごとく、日本が大きな和の国になればと思っています。

ぼくは37代目ですが、神社は必要とされる限り続いていきます。次世代まで、みなさんのお役に立ち続けたいですね。

ーでは最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

鈴木:現在は新型コロナウィルスが流行して、今までできていたことができなくなってしまい、誰もがこれまでの普通の生活の「有ることが難しい状」つまり「有り難さ」を感じていると思います。

そして、今までいろいろなものを求めていたなかで、本当に自分に必要なものを知ることができた時期でもあったと思うんです。

人と会えないなかで、人と会うことの大切さに気づいた方も多いと思います。

去年の干支の「子(ね)」という字は、「種子(たね)」の「子(ね)」を表しています。去年はコロナ禍でみなさん我慢して、その種に水をあげていたんです。

今年は干支は「丑(うし)」。丑に糸をつけると紐になります。

種子から生えた細い「糸」、つまり根っこを紡いで細い紐にし、さらにそれをみんなであわせて、太い丈夫な紐を作っていく、ほつれることがないように一人ひとりがしっかり支え合う、今年はそんな年です。

まだまだ我慢する日々が続きますが、コロナが開けたときに、万全の態勢で動き出せるよう、毎日を過ごしていただけたらと思います。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました。



■取材協力:鎮守氷川神社

坂本 菜緒
この記事を執筆した執筆者
坂本 菜緒

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

ピアノ、体操、フィギュアスケートなどの習い事を掛け持ちしつつ、小学3年生から進学塾に通う。高校受験で山手学院高等学校に進学。その後、大学受験で東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に入学。同校の大学院美術研究科を修了し、美術と工芸の専修免許状を所持。2012年から東京都公立小学校にて勤務。2018年5月に株式会社サイバーエージェントグループ会社である株式会社CyberOwlへ中途入社。2021年3月から「テラコヤプラス by Ameba」にてエディターとして従事し、保護者の方やお子様にとって、目的にあった最適な習い事に出会える記事作りを目指しています。