山田池はおよそ1200年前に築造され、江戸時代には深刻な水争いの歴史が記録されているため池です。
現在は、池を取り囲むような形で「山田池公園」があります。
大阪府枚方市という中核市にありながら公園一帯を木々が囲み、豊かな自然を感じることができる公園。
「山田池公園」は多数のボランティア団体と連携しており、来園者にさまざまなイベントを提供することで、周辺地域における自然教育の中核を担っています。
都市化がすすむ昨今において、自然について学べる公園はとても貴重な存在でしょう。
今回は、山田池公園管理事務所の中村光希(なかむら みき)さんに、公園の歴史や施設内容についてお話を伺いました。
約1,200年の歴史を持つ「山田池公園」
ー本日はよろしくお願いいたします。まず、「山田池公園」とはどのような公園なのでしょうか?
中村 光希さん(以下、中村):「山田池公園」は、1979年に開設した大阪府営公園です。
公園の広さは全体で73.7ヘクタールあり、甲子園球場約20個分の広さを有しています。
公園の中心には公道と私道が通っており、その道路を境にしてエリアが南北に分かれているのが大きな特徴のひとつです。
それぞれ北地区・南地区と呼んでいます。
北地区は公園の名前の由来になった山田池のほかに、竹林や花木園があったりと緑豊かなエリア。
南地区は遊具や芝生広場、バーベキューエリアがあったりと開放的で賑わいのあるエリアです。
また、非常時には「大阪府防災計画」として、枚方市の広域避難地・広報支援活動拠点に位置づけられています。
大きな道路が近くを通っているので、自衛隊など非常時に活動する方々の一時的な駐留地としての役割を保有しているんです。
ー続いて、「山田池公園」の歴史について教えていただけますでしょうか?
中村:「山田池公園」は、1969年に都市計画公園として計画され、1993年に北地区が完全オープンしました。
その後、1995年から南地区に着手し順次オープンしています。
公園は山田池を取り囲むような形でつくられており、山田池は農業用のため池として、約1,200年前から存在していたとされる非常に歴史のあるため池なんです。
「聖徳太子伝」という古い書物のなかには、「山田池を指している一文がある」と言われています。
また、江戸時代には山田池を巡って深刻な水争いがおこなわれていた歴史的背景があり、都市公園法施行50周年記念事業による「日本の歴史公園100選」にも選定されました。
果物や野菜の収穫を体験できる「実りの里」
ー「山田池公園」のなかにある「実りの里」は、どのような施設なのでしょうか?
中村:「実りの里」は、7つの田畑で構成されている「棚田エリア」と、ビワやスモモなどの木が植えてある「果樹園エリア」のふたつでおもに構成されています。
いまはスーパーでなんでも買える時代になっていて、実際に果物や野菜などがどういう形で育っているのか、普通だとなかなか見る機会はないはずです。
公園のなかに田んぼや実のなる木があるのは、とても珍しいケースなんですよね。
そこで、「実りの里」では、果物や野菜の収穫体験イベントを実施することで、子どもたちが自然の作物の育ち方などを学んでいただけるようになっています。
時期に合わせた作物の収穫体験イベントを年に数回開催しており、ビワやスモモ以外にも、じゃがいも・玉ねぎ・落花生なども収穫可能です。
収穫した果物や野菜は、もちろん持って帰っていただきます。
ただ、収穫できる作物はイベントに参加した人以外の分にも、もっとあるんですよね。
玉ねぎやじゃがいもであれば、100キロとか6000個くらいの単位で収穫していて、職員が収穫した作物をお譲りするイベントを開催しているんです。
たとえば、玉ねぎ1.5キロを先着200名に100円で販売するなど、市場価格よりも安い価格にして。
さらに、それでも余った作物は地域と連携して、「子ども食堂」など枚方市の食育活動に提供しています。
自然を守るボランティア団体との強い連携
ーボランティア団体の方々は、どのような活動をおこなっているのでしょうか?
中村:「山田池公園」では、全部で9つのボランティア団体が活動をおこなっています。
たとえば、「枚方市生き物調査会」や「淀川自然クラブ」というボランティア団体の方々が、山田池公園の自然を調査や子どもと一緒に自然観察を実施しています。
公園内を実際に見て自然に触れながら、子どもたちに園内の自然環境について解説をしていいただく活動内容です。
また、「ゆうゆう自然クラブ」というボランティア団体の場合は、園内にある竹林の管理だけではなく、子ども向けのクラフト教室や、木々や木の実を使った自然の工作教室などを定期的に開催しています。
ボランティアの方々のイベントは、昆虫観察などもおこなったりと、「山田池公園」の自然を活かした活動が多いので、子どもたちに「自然を守っていこうね」と環境保全を伝えるきっかけづくりになっていますね。
そのほかにも、ボランティアのなかには高齢者の方々も多くいるので、会話を通じて子どもたちが昔の歴史を学ぶ機会になっていることも魅力のひとつではないでしょうか。
ー昆虫の観察というのは、具体的にどういった活動内容になのでしょうか?
中村:公園内は、とくに北地区になると本当に植物ばかりなんですよね。
そのため、さまざまな場所で昆虫を見ることができます。
昆虫の生態に詳しいボランティアの方が、昆虫を見やすいポイントに子どもたちを案内して、実際に発見した昆虫の解説しているので、自然環境で生きるリアルな昆虫の生態を学ぶことができる活動内容です。
子どもたちが自然を愛する心を育める公園に
ー「山田池公園」の今後の展望などあれば、教えてください。
中村:「山田池公園」は、風致公園(ふうちこうえん)という「自然を楽しむための公園」として計画し作られた公園です。
そのため、今後も計画のコンセプトを守っていければよいと考えています。
とくに、都会では味わうことが難しいような自然環境を、これかも気軽に楽しんでもらえる公園でありたいと。
そのなかで、「実りの里」のイベントのように、自然体験や農業体験ができる環境を強みにしていければと思います。
公園を訪れた方々に、貴重な体験を積み重ねていただきたいです。
また、「山田池に月が反射して映って見える風景」を、大阪府枚方市が市内の名所として「枚方八景 」に選定してくれています。
園内に大きい屋根のついた「観月堤」という休憩場があるので、そこでお月見の時期にススキを立てて趣深い形にあしらったイベントが開催できたらいいなと、現在計画中です。
ー最後に、公園を利用される子どもや保護者の方に向けてメッセージがあればお願いします。
中村:「山田池公園」は、公園として珍しい棚田や果樹園がある以外にも、「カワセミ」「アオバト」「オオタカ」などの珍しい野鳥の観察スポットとしても人気です。
夏にはカブトムシを発見することもでき、日本の里山における原風景のような自然を満喫できる公園になっています。
昔からある公園なので、多くの方が自然と触れ合った記憶が根強く残っているのかもしれません。
春は桜、夏は花菖蒲(はなしょうぶ)、秋は紅葉、冬は梅と、四季折々の景色を見ることができます。
そのほかにも、公園の遊具で遊んだり、お花見やバーベキューなど、家族でたくさんの思い出を楽しめる場所になっています。
自然と触れ合いながら思いっきり遊び、ぜひ、自然を愛する心を育むめる場所として活用していただけたら嬉しいです。
ー本日はお時間をいただき、ありがとうございました!
■取材協力:大阪府営 山田池公園