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霧多布湿原を守る認定NPO法人「霧多布湿原ナショナルトラスト」を取材!未来のための環境教育とは

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北海道の東部にあり、たくさんの花がお花畑を形成することから「花の湿原」とも呼ばれている「霧多布湿原」

霧多布湿原の環境を守るために設立されたのが、認定NPO法人「霧多布湿原ナショナルトラスト」です。

民有地である霧多布湿原の一部を買い取り、さまざまな植物や動物の環境保全活動をおこなっています。

環境教育による活動プログラムでは、町内はもちろん町外からも多くの人が訪れるほどの人気です。

今回は、認定NPO法人「霧多布湿原ナショナルトラスト」の森田 茉莉子(もりた まりこ)さんに、活動内容や環境教育についてお話を伺いました。

1年中多くの植物や動物を観察することができる「霧多布湿原」

霧多布湿原ナショナルトラスト9

ー本日はよろしくお願いいたします。まず、「霧多布湿原」とはどのような湿原なのでしょうか?

森田 茉莉子さん(以下、森田):霧多布湿原は、夏にはエゾカンゾウやヒオウギアヤメなどの花が咲き、1年を通して数百種類の花が咲いて花畑をつくることから「花の湿原」とも呼ばれている、北海道の代表的な湿原のひとつです。

霧多布湿原のある浜中町は、森・湿原・海がつながっている自然に溢れた環境になっていて、四季折々の植物や鳥を観察することができる特殊な場所になっています。

特に鳥に関しては、タンチョウやオオワシなどの有名な鳥までいて、日本に生息する野鳥の約半分を見られるんです。

ー認定NPO法人「霧多布湿原ナショナルトラスト」を設立したきっかけを教えてください。

森田:
私たちの団体は、霧多布湿原を未来の子どもたちに引き継いでいこうという大きなミッションを掲げています。

霧多布湿原の多くは民有地で、人が個々で保有している土地なんです。

浜中町は、昆布がたくさん獲れる町で、昔は昆布を海から陸に引きあげるのに馬を使っていました。

その馬を放していた民有地が、霧多布湿原なんです。

しかし、時代が変わって今は馬ではなくトラックが主流となったため、湿原の必要性が減り、環境が荒れ始めてしまったのです。

そこで、なんとか霧多布湿原を守りたいという思いから、2000年にNPO法人として設立しました。

湿原を未来の子どもたちに残していく

霧多布湿原ナショナルトラスト3

ー「霧多布湿原ナショナルトラスト」がおこなっている「活動の3本柱」ついて、それぞれ具体的に教えてください。

森田:
活動の1本目は「調査研究事業」です。

「地域の自然や壊れた自然を再生する」ことに関して、さまざまな調査研究をおこなっています。

代表的なのが「ハーバリウム・霧多布」という事業です。

「ハーバリウム・霧多布」は、浜中町に生育している植物を次世代に記録していくために、植物を採取して標本として残していく活動です。

今までに、約400種の植物を採取してきました。

また、「昆布の干場を湿原に復元する実験」も2015年からおこなっています。

昆布漁で使わなくなった土地を私たちの団体で買い取って、砂利を取り除いて周辺の湿原の植物を移植し、どれくらいのペースで湿原に復元できるのかを実験しています。

毎年継続的にモニタリング調査していて、この6年でかなり湿原に戻りつつあるという調査結果が出ているんです。

霧多布湿原ナショナルトラスト1

続いて、2本目は「ナショナルトラスト活動」と「湿原保全活動」です。

ナショナルトラスト活動」については、民有地である湿原やその水源地である森を買い取ることで、開発のリスクから守っています

現在は1,060ヘクタールの土地を買い取って保全しています。

今後は、買い取った土地を、地域住民に普及活動をおこないながら、どのように活用していくのかが課題ですね。

それから、「湿原保全活動」として大きくおこなっているのが外来種対策です。

特定外来種が霧多布湿原の周辺地域に入り始めていて、特に「オオハンゴンソウ」という植物は、根本からほかの植物の生育を阻害する成分を出すため、全国的にも問題になっています。

霧多布湿原ナショナルトラスト8

「オオハンゴンソウ」は道路際に咲いていることが多く、種が車に付着してそのまま隣町から運ばれるケースなど、北海道中で増殖が進んでいるんです。

霧多布ではまだそれほど見られていないので、水際対策として駆除作業を始めています。

そのほか、外来種駆除以外にも
在来種の植物を守る活動もおこなっています。

特に「エゾカンゾウ」という黄色い花が有名で、7月上旬あたりに湿原のなかで群落をつくるんです。

しかし、近年エゾシカの数が増えている影響で、この花のつぼみを食べてしまい、7月に咲く花の数が激減していた時期がありました。

現在では、それを防ぐために湿原の周辺に電気柵を設置し、地域住民と共同で電気柵の点検作業をおこなうことで、食害数が減り、ここ数年は「エゾカンゾウ」のお花を多く見ることができるようになっています。

霧多布湿原ナショナルトラスト10

そして、活動の3本目は、「湿原のファンづくり」です。

保全団体と聞くと、開発に対する反対運動などをするイメージが強いかと思いますが、私たちの団体は、湿原が好きな人を増やすための運動をしようという特色が強いです。

好きな人が増えることで、湿原にゴミを捨てる人や汚そうとする人が減っていくため、ファンづくりをするための活動は大きくおこなっていますね。

「霧多布湿原ナショナルトラスト」ではこれらの3本柱を中心として、「湿原を未来の子どもたちに残していく」というミッションを遂行しています。

子どもに対する環境教育の実施

霧多布湿原ナショナルトラスト5

ー「霧多布湿原のファンづくり」について、具体的にどのような活動をおこなっているのでしょうか?

森田:
わたしたちは「子どもに対する環境教育」と言っているのですが、大きくわけて「自然体験学習」と「きりたっぷども自然クラブ」のふたつがあります

浜中町の学校教育では、子どもたちに向けて「浜中町の自然や産業を発信できる子どもを育てていく」というテーマがあるのですが、そのサポートを私たちがおこなっているんです。

学校の授業との差別化を図るため、「きりたっぷども自然クラブ」では、地域の自然や産業を中心としたプログラム体験を実施しています。

浜中町の漁業協同組合と一緒にアサリ掘りをおこなう「浜中漁業体験」では、捕ったアサリをより大きく成長させられるよう、柔らかい砂浜に移動させる漁業の手伝いをおこなってもらいます。

そのため、あえて生育が悪く小さめのアサリしか捕れないような場所でおこなっていて、アサリを持ち帰る前提ではおこなっていないんです。

これは、子どもたちにプログラムを体験して楽しんでもらい、より浜中町を好きになってもらうことを目的としているからです。

もちろん、事前に大きめのアサリを漁業協同組合からいただいて、
それを子どもたちに「アサリがこういうふうに大きく成長するんだよ」と感動を伝えてから、美味しく食べてもらう体験も、しっかりと実施しています。

そのほかには、浜中町には「嶮暮帰島(けんぼっきとう)」という無人島があり、島内を巡りながら、
昔その島に人が住んでいた歴史や自然について学ぶ活動をおこなっています。

もともと漁師で昆布漁をしていた方が、無人島ツアーとして、自分の漁船を使用して子どもたちを無人島まで乗せてくれているんです。

ー活動を通じて、どのようなことが学べるのでしょうか?

霧多布湿原ナショナルトラスト2

森田:わたしたちが活動している浜中町は、町内に小学校が4校しかなくて、少ないところだと同級生が2人、多くても20人未満ということがあります。

そのため、子どもが同じ学年同士でコミュニケーションを取ることが難しい地域もあるんです。

特に酪農地帯の子どもだと、隣の家との距離が1キロ以上離れていることは当たり前で、道中にはヒグマが通るため、車で送迎してもらわないと友達の家に遊びにいくこともできないような子どももいます。

このような背景があるからこそ、子どもを集めて私たちが活動を実施することで、子ども同士が楽しく遊べる環境を提供し、人と人とのつながりを知り、学ぶことができる場所になればいいなと考えています。

ー体験には、別の県の方なども参加できるのでしょうか?

森田:地域の制限は設けていないので、参加したい方はどなたでも参加可能です。

参加したい場合は、連絡をしていただき登録・参加予約をしてもらう形になります。

登録していただいた住所には、毎月活動案内をお送りしています。

ただ、今はコロナ渦ということもあり、野外活動に注目が集まっていて、浜中町周辺の小学生だけでもすぐに定員が埋まってしまいます。

もちろん、遠方から参加いただけることはありがたいのですが、新型コロナウイルスの影響で、現在は市町村レベルでの活動をおこなうしかない状況です。

これは、現在の課題であり、なるべく人気のある活動は、年間の回数を増やすなどの対応を取りながら、少しでも多くの人に参加してもらえるように努力しています。

新型コロナウイルスの影響が収まった際には、ぜひ遠方の方のご参加もお待ちしています。

ースタッフの方々は、どのような人が集まっているのでしょうか?

霧多布湿原ナショナルトラスト6

森田:職員は、元出身のスタッフと町外から来たスタッフが半数ずつで構成されています

お互いにさまざまな意見を交換しながら、よいものをつくりあげていきたいと運営していますね。

また、子ども自然クラブでは、町内の方に講師やガイドを依頼していて、子どもに「町内の大人の方と関わる機会を提供する」ということも、ひとつの目的にしているんです。

普段なかなか大人と触れ合う機会が少ないからこそ、多くの大人と関わり合っていろいろなことを吸収してもらいたいと思っています。

これは、町内の講師やガイドの方も同じで、地域の子どもたちと触れ合う機会は少ないと思うので、お互いがよい時間を過ごせるのではないかと考えていますね。

子どもにとって、さまざまな年齢の人と関わり合えるのは素敵な環境ですね!

「霧多布湿原ナショナルトラスト」の活動拠点である北海道厚岸郡には、いくつかの塾・学習塾があります。

Ameba塾探しでは、エリアなど条件を絞って塾・学習塾を比較・検索することが可能。

厚岸郡厚岸町 塾・学習塾 ランキングから、自分にぴったりな塾・学習塾を探してみてくださいね!

霧多布湿原や浜中町を子どもたちの誇りに

霧多布湿原ナショナルトラスト4

ーこれからどういう活動をしていきたいかなど、今後の展望があれば教えてください。

森田:霧多布湿原を好きな人や浜中町に誇りをもっている人が、少しでも多くなってくれればよいかなと思っています。

子どもたちが大人になったときに、仮に浜中町を離れてしまったとしても、素敵な記憶として残っていたら嬉しいですね。

得に今は人口減少が止まらない状態で、ひとりでも多くの子どもたちに、よい思い出を残せていけたらと考えています

ー最後に、読者に向けてメッセージがあればお願いします。

森田:コロナ禍が落ち着いたら、ぜひ霧多布湿原や浜中町に遊びにきてもらえたら嬉しいです。

最近は浜中町の海でラッコが繁殖し始めたので、時事的なニュースも含めて、ぜひ遊びにきてください。

ー本日は、お時間をいただきありがとうございました!

■取材協力:認定NPO法人 霧多布湿原ナショナルトラスト

工藤 智也
この記事を執筆した執筆者
工藤 智也

Ameba塾探し 執筆者

「Ameba塾探し」の編集兼ライター。子どものころは勉強が苦手で、好きな教科と嫌いな教科でテストの点数が極端に違ったタイプ。国語が好きで、本ばかり読んでいた学生時代。中学校で塾に通い、その時に初めて塾で勉強すると成績が伸びることを実感。苦手な数学の成績が上がったことは、勉強に対する考え方が変わった良いきっかけに。この経験を活かし、勉強することが苦手な人が、少しでも勉強を好きになり前向きな塾選びができるようなサイトを目指します。