子どもに習い事をさせたいけれど、金銭面などさまざまな家庭の事情で、習い事を諦めているというご家庭も多いのではないでしょうか?
今回は、そんな子どもたちの可能性を少しでも広げたい、多くの学びを提供したい、と活動をおこなっている NPO法人「育伸会」を取材。
育伸会では、すべての子どもが同じように学びや経験ができるよう、月謝サポートスタイルをおこなっています。
子どもたちの明るい未来への想いと、“月謝サポート”の支援について、NPO法人「育伸会」理事長の保 公介さんにお話を伺ったので、ぜひご一読ください。
新しい“月謝スタイル”の支援へ込めた願い
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは、「育伸会」がどのような活動をされている団体なのか教えてください。
保 公介さん(以下、保):私たちは、金銭的な事情で習い事の選択肢が減ってしまうご家庭を、「企業が子どもを育てる」という観点で支える活動をしています。
さまざまな家庭環境があるなかで、現在は、ひとり親家庭の子どもたちに対して、スポーツをメインにした習い事のサポートをおこなっております。
月謝スタイルの支援で、月謝を家庭にお支払いするのではなく、運営者側に直接、家庭の代わりにお支払いをするという形です。
ースポーツというと、サッカーや野球、水泳といったところがメインですか?
保:スポーツ全般を対象としているので、体を動かすことなら何でも構いません。
大切なことは、どんなスポーツをするかではなく、自分以外の誰かと関わり、コミュニケーションを取れる環境なのか、だと思うんです。
今はまだ資金が少ないのでスポーツ系と絞っているだけなのですが、今後はピアノなどといった文化系の習い事も考えています。
ーサポートを受けるには条件があるのでしょうか?
保:習い事をするには、ひとり親世帯で、収入のラインなどに当てはまっていれば可能です。
さらに、対象年齢は小学校1年生から6年生となっています。
ー次に、設立に至るまでの経緯を教えてください。
保:私は本業でお部屋片づけの会社をやっているのですが、この仕事は家庭環境が見える仕事でもあるので、さまざまな環境で子どもが育っていることを知って。
そのなかで、ただ片付けをするだけではなく、何か関われることはないのかな、と思うようになりました。
最初は養護施設への寄付も考えていたのですが、いろいろな方と話をするなかで、ひとり親家庭の生活負担や育児負担の現状を知ったんです。
ひとりで子どもを育てていると時間もないし、収入面も大変ですよね。だったら子どもが外に出て、少し手が離れる時間ができたら楽になるんじゃないかと思いました。
月謝の上限は月額1万円までなのですが、月1万円でも誰かが支援することで食事が1回できるとか、ほかのことにお金を回せるとか、少しの余裕で子どもを育てる環境がちょっとでもよくなるのではないのかと思ったんです。
さらに、そういうサポートをやっているところがほかになかったというのと、お金を出して終わり、ではあまり意味がないと感じて…それなら自分たちでやったらいいのかなと思い、本業とは別にNPO団体を作りました。
会社経営をしている友人たちに相談したところ、それなら協力できるという声が多く集まったことも、設立への大きな後押しになりました。
企業が子どもたちを育てる環境を目指して
ー生活や育児の負担を少し和らげるということにフォーカスされたきっかけなどがあれば教えてください。
保:生活が困窮するほどの家庭環境の方のサポートには、行政がおこなっている生活保護がありますよね。
そういった方ではなくて、もうすこし違う層、例えば働いているけどもう少しゆとりがあればな、という方への支援が少ないと思ったのがきっかけです。
それぞれの家庭環境で習い事ができるできない、という最初のスタートラインが違うのは仕方ないと思っているので、そうなったときに誰かが何かサポートをすればいいのではないかと思いました。
それに、地域の子どもたちは育てばいつかは自分たちのお客さんになったり、従業員になったりして会社に関わるわけですから、企業が子どもを育てるような環境を作っていければいいのかな、と思って。
子どもの習い事や経験とかを商売にするのではなく、みんなで子どもを育てていくことができればいいですよね。
自分の会社で出た利益を社会に還元して地域の子どもたちが育つ環境を作っていければ、もう少し円滑に何かが生まれるのではないかと思っています。
ーこのようなサポートがあることを知らない方が多いと思うので、少しでも多くのご家庭に知ってもらえればいいな、と思います。
保:ありがとうございます。子どもが習い事に通うことによって親御さんも新しいコミュニティに参加できたり、外との接点に繋がったり、親子でメリットがあると思っています。
子どもだけではなく、親御さんも少し違うきっかけができるというのはプラスになることが多いのではないでしょうか。
スポーツの習い事では、学習塾とはまた違う繋がりができるので、親子で新しい発見があると思います。
ー確かにそうですね。 スポーツ系の習い事だと、送り迎えの場面で保護者同士のコミュニケーションが発生するイメージがあります。
保:そうですね。あとスポーツ系の習い事は、一緒に目標や目的を持って、子どもと共有しやすいというのもいいですよね。
実は、私の周りにはひとり親の人が多いので、サービス内容の相談をしたところ、現実になればとてもありがたいという意見を聞くことができて。
そこで1回募集をかけてみようか、とやってみたんです。なんの告知もせずにインスタだけで募集したのですが、それだけでも申し込みがあったので、利用したいと思う方がいるんだな、というのがわかりました。
今は私の会社だけの資金なのでそんなに拡充できていませんが、やってよかったなと思っています。
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商品を買うことで寄付が継続できる仕組み
ーもっとたくさんの人がこのサポートを知ることで、協賛しようと思う会社も増えるのかなと思いました。
保:今は私の会社の寄付という形でやっているのですが、それだと会社の経営状況によってはサポートの継続が難しくなってしまう可能性があると考え、今団体のなかで商品を作っています。
その商品を販売することで、活動の資金の一部を寄付できるようにしようと思っています。
来年には子どもでも使える日焼け止めや、虫よけを作る予定です。
また、ヴィーガン料理の専門の方と洋菓子を作る計画もあります。
その商品がちゃんと共感して買ってもらえるようになれば、収入として団体の運営費に回せるので、自分たちで自立できるように進めているところです。
ーサイトを拝見したのですが、ハンドミルクやコンシーラーなど、物を買うと寄付につながるのですね。売上の10%が寄付に回るのですか?
保:コンシーラーは、うちの団体の理事が経営する会社の商品なんです。
最近コーズマーケティング商品などをよく見かけると思うのですが、そういった形であればもっと活動が広がっていくのではないかと思っています。
何かを買うだけで寄付ができれば、寄付がしやすくなりますよね。
ー寄付などをしたことがない方も、それだったらハードルがさがりますね。
保:私自身も寄付をしていた経験がありますが、寄付に対して報告があるだけでは、実感が沸かず継続に繋がらなかったんです。
それなら、欲しい“モノ”を買うときに、寄付が含まれる商品を買おう、と思っていただくほうが寄付活動が継続しやすいのではと考えました。
ーそうですよね。ハンドミルクや化粧品などは日用品なので、なくなったタイミングでまた寄付しよう、とリピートにもつながりそうです。
保:例えば、10%安く買うか、寄付が含まれている定価の商品を買うか、それは選ぶ側の問題だと思うので、安く買う人がいてもいいと思っています。
この活動に共感してくれる人に参加していただき、さらに活動の場を広げることに繋げていきたいですね。
ー協賛したい企業や個人の方は、ホームページで募集されているのでしょうか?
保:はい、随時ホームページで募集しています。
個人の支援ももちろん可能ですが、企業から自社の商品を販売して寄付をしたいと問い合わせがきたらとても嬉しいなと思います。
企業が支援する取り組みが少しでも増えていくことを目指しているので、そういう活動に興味がある方がいれば、ぜひ参加していただきたいです。
活動を通して家庭環境による成長格差をなくす未来へ
ー今後の展望や課題をお聞かせください。
保:子どもたちが何かをやりたいと望んだとき、誰もが学べる環境を大人がつくり上げていかなければいけないと思っています。
将来、子どもたちが大人になり国を作るわけですから、これからの日本や、世界のことを担う人になるわけです。
その子どもたちの家庭環境による経験の格差を少しでもなくして、誰もが学べる機会を提供するにはどうしたらいいか、みんなで一緒に考えてもらえたら嬉しいです。
今は企業側に対して、そういった環境づくりのきっかけに繋がればいいなと思って、細々とですが取り組んでいます。
ー最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。
保:今は支援対象者をひとり親家庭と絞っていますが、特にそこにはこだわらず、今後はサポートを必要とする、より多くの家庭に支援を広げていく予定です。
単純に子どもたちが育つ環境をもっと広げたい。そうすればもっと楽しいことも増えると思っています。
家庭の事情など、さまざまな理由で習い事を諦めている方たちにも、私たちのサポートをひとつの選択肢として考えてもらえると嬉しいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:育伸会