STEAM教育とは?【文部科学省推進】中央教育審議会委員に事例や今後の課題について徹底取材

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子どもたちが未来を生き抜くために必要な力を養うための「STEAM教育」という言葉をご存じでしょうか?

少しずつ注目されつつあるこのSTEAM教育は、文部科学省が推進している新しい時代の教育方法

しかし、「テレビなどで聞いたことはあるけどあまりよく知らない」「実際に小学校などでどう取り入れられているのか知らない」という人も多いのが現状です。

今回はそんなSTEAM教育について、中央教育審議会臨時委員を務める神野 元基さんにインタビュー。

STEAM教育とは何か、その必要性、取り組み事例などについて解説していただきました!

  1. STEAM教育とは?中央教育審議会臨時委員を務める神野さんに聞いてみた
  2. STEM教育にArt(アート)を加えることで創造力・表現力の育成も
  3. 文部科学省が推進しているSTEAM教育が現代の子どもたちに必要な理由
  4. 海外におけるSTEAM教育の事例
  5. 日本におけるSTEAM教育の事例
  6. 日本が抱えるSTEAM教育の今後の課題とは?
  7. まとめ
神野 元基
この記事を監修した監修者
神野 元基

テラコヤプラス by Ameba 監修者

慶應義塾大学在学中より企業家として活動し、2010年よりシリコンバレーで起業。
2012年に株式会社COMPASSを創業。同年に八王子で学習塾「COMPASS」を開校。
その後、2014年より人工知能型教材「Qubena」の開発に着手。
2021年6月現在、中央教育審議会臨時委員を務める。

STEAM教育とは?中央教育審議会臨時委員を務める神野さんに聞いてみた

坂本 菜緒
エディター
STEAM教育について詳しく教えてください。
神野 元基
教育イノベーター/中央審議会特別部会臨時委員
「STEAM教育」とは下記の5つの要素を盛り込んだ教育手法をSTEAM教育のことです。

それぞれの頭文字を組み合わせた造語で、「スティーム教育」と読みます。
STEAM教育の説明イラスト
神野 元基
教育イノベーター/中央審議会特別部会臨時委員
「STEAM教育」について端的にいうと、将来求められる「子どもたちが未来を生き抜くために必要な力」そのものを養うための教育。

たとえば受験など、学校教育のなかで問われる学習能力というものは、そのすべてが社会に出てから求められるとは限りません。

STEAM教育が目指しているのは、現代の社会で求められている能力を子どもたちがしっかりと身に付けるということ。

そのために、今何をすべきかを考えるのがコンセプトになっています。


テラコヤプラスでは、神野様のインタビューの様子を公式YouTubeチャンネル 公開中!

STEAM教育が「なぜ今の子どもたちに大事なのか?」を動画でわかりやすく解説していただいています。

気になる方は動画も合わせてチェックしてみてくださいね。

STEM教育にArt(アート)を加えることで創造力・表現力の育成も

もともとSTEAM教育は、「STEM教育」という言葉からはじまります。

IT技術者が足りないという状況が問題視されるようになったことがSTEM教育の発端。

これからの発展が予想されるIT産業の現場に技術者がいないというのは国力の問題にもなります。

そのため、とにかくSTEM教育とそれに関わる人材の重要性を、当時アメリカの大統領であったバラク・オバマ氏が主張。これをきっかけに、STEM教育が世間に知られるようになりました。


STEM教育はIT人材ということを強く意識した言葉であるため、やや理数教育に偏りがちなイメージがあります。

ただ、数学や科学で勉強したことをエンジニアリングやテクノロジーに活かすことにより、社会において新しい価値を見出すようなプロダクトをつくったり、ソリューションを生んだり…そういうことまでを目的とした教育こそがSTEM教育の求めるもの。

そんななか、テクノロジーを使いこなすだけでなく、クリエイティビティを発揮するほうがより現代では求められるという視点から、A=Art(アート)、つまり芸術・教養が加わりました。

絵を描いている子どもの画像


さらに、このArtという言葉には、「リベラルアーツ(教養)」という意味も含まれているのだそう。

物事をさまざまな考え方で捉え創造力や表現力を育成することで、社会で活躍し豊かな人生を送れる人間を育むために加わったと考えられています。

神野元基インタビュー画像
坂本 菜緒
エディター
この「Art」という言葉について、さらなる捉え方ができるとのことですが、それはどういったことでしょうか?
神野 元基
教育イノベーター/中央審議会特別部会臨時委員
私は、STEAM教育に変わるその裏側であったことというのが「AI」の台頭だと思っているんです。

2010~2011年にAIが登場するわけですが、AI自体が人間の仕事の何%を変えたり、シンギュラリティ(技術的特異点)が起こったり、そういうことがいわれるようになりました。

単純な理数教育をしているだけでは、そもそもITエンジニアになったとしてもAIに台頭されてしまうのではないか、という背景があったと考えられます。

そんななかで、理数教育に何を加えるべきか、という考えから生まれたのが「Art」なのではないかと思っています。
坂本 菜緒
エディター
そこで、STEM教育の関係者の方たちはどのように考えたと思われますか?
神野 元基
教育イノベーター/中央審議会特別部会臨時委員
STEMというのは、ある意味世の中の問題を解決する手段、になるのではないかと。

たとえば、思うように身体の動かない高齢者に対してロボットのようなエンジニアリングをつくり補助をし、身体を動かしやすくするという解決策を生むというのは可能ですが、エンジニアリングをつくる前に、そもそもその問題を発見しなければいけません。

高齢者だけでなく、生まれながらにそういう特性を持つ人や事故により身体が不自由になった人もいます。

その人たちが「生活するうえで何に困っているのか」ということまで含めて掘り下げて考え問題の根幹に達しなければ、テクノロジーによる解決策というのは見えてきません。

そのようなヒューマンスキルを含めた考え方、問題の発見から解決までの考え方全体を総合して「Art」という形で取りまとめるんです。

そうして世の中全体の問題を発見し解決するまでを思考できるような教育をする、というのを根底から目指したものがSTEAM教育の頭文字に表れていると私は捉えています。

文部科学省が推進しているSTEAM教育が現代の子どもたちに必要な理由

コーディングの勉強をしている子どもの画像

文部科学省が出している「学習指導要領」というものがあります。これは、日本のすべての学校に対する教育のスローガンのようなもの。

そのなかでも、STEAM教育において重要になるのが「主体的・対話的で深い学び」という項目です。

主体的というのは、つまり子どもたちが自分から学ぶということ。対話的というのは、お互いインタラクティブに対話をするということです。

これまでの一方通行型な、先生が黒板の前に立ち、チョークで文字を書きながら一方的に話す授業が主体的・対話的かと問われると、そうとはいえません。

一方通行型の授業は子どもたちが受け身になっている時間が多く、主体性を伸ばしにくいもの。

なるべく子どもたち一人ひとりを中心に学習が組み立てられることで、主体性を発揮させるような授業の設計をしていかなければなりません。

STEAM教育、または探求型学習ともいいますが、これらの授業では、主体性や対話性を重視した教育スタイルになっています。

従来の教育と探究型学習の違いを説明するイラスト画像


また、「答えはたったひとつ」「必ず正しい答えがある」と考えさせるのがこれまでの教育のあり方でした。

しかし、社会に出てから気付くのは「答えは必ずしもひとつではない」「正しい答えが必ずあるとは限らない」ということ

社会に出ると、必ずしも意思決定をしなければいけない場面に直面します。一方通行型の教育しか受けてこなかった大人は、安易に他人に答えを求めてしまったり、正しい答えを教えない人を責めてしまったりします。

STEAM教育は、子どもたち一人ひとりが決めたテーマに沿って自分なりに学習を進めていく方法なので、ひとつの答え、ひとつの形に収まるということはありません。

たとえば自分と同じテーマを選んだ子の発表がまったく違う結果になることもあります。でも、それを受け止めることが大事。

世の中の物事に対して一人ひとりが自分の正しいと思うものを主張し、それをみんなが認め合う。多様性のある社会で多様性のある答えを持てる。STEAM教育がもたらす大きな効果といえるでしょう。

また、学ぶことの楽しさというものを育てることも重要なこと。STEAM教育学びの楽しさを身につけられるいい機会でもあります。

海外におけるSTEAM教育の事例

アメリカの学校の画像

海外でのSTEAM教育の事例としては、まず「High Tech High(ハイテク・ハイ)」の存在があります。

High Tech Highとは、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴにある先進的な教育を取り入れている高校。

この高校では、STEAM教育に加えて「Project Based Learning(課題解決型教育)=PBL」という学習方法も取り入れています。

PBLは教師から一方的に知識を与えるのでなく、子どもたちが自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした学習方法。ひとつのプロジェクトを基軸に置き、課題を解決するためにあらゆる知識を渡り歩いて学ばせます。

PBLでは、6つのステップとして、以下のプロセスを経ていきます。そうすることで、課題の解決よりも、その解決にたどり着くまでのプロセスが重要だという学習理論を掲げています。

【問題解決までの6つのプロセス】

  1. 問題を見つける(テーマの決定)
  2. 実践的・論理的手法で解決策を考える
  3. 相互に話し合い、何を調べるのか明確にする
  4. 自主的に学習する
  5. 新たに得た知識を問題に適用する
  6. 学習したことを要約する


また、PBLの教育方法としては「テュートリアル型」と「実践体験型」の2つがあります。

PBLの学習方法のイラスト


テュートリアル型は、ひとつの課題に対して仮説を立て、上記の6つのステップに沿って検証する方法。

そして実践体験型は、課題を実社会(民間の企業や地方自治体)のなかに設定し、社会と連携しながら上記6つのステップを経て問題を検証する方法。

準備や綿密な連携が必要なことも多い実践体験型に比べ、テュートリアル型のほうが実施するハードルが比較的低いため、PBLの学習方法として主流になっています。

このPBLとSTEAM教育を組み合わせ、最適な形で実現しているのがHigh Tech Highの特徴

文部科学省が掲げる「主体的・対話的で深い学び」というものを形にしたことで有名になりました。

2015年には、High Tech Highを舞台としたドキュメンタリー映画「Most Likely To Succeed」も上映され、翌年には日本でも公開されました。

「Most Likely to Succeed」予告映像


映画は次第に世界中へと広まり、各地で上映会が実施されていきます。

これに影響を受け、STEAM教育のソリューションを提供しているのが、 中国のMake block(メイクブロック)社やシンガポールのScience Centre(サイエンスセンター)

Make block社では、STEAM教育ソリューションプロバイダーとして、これまで140ヶ国以上の教育施設にプログラミング学習用のロボットやソフトウェアなどを提供。

Science Centreは、科学教材コレクションを持つ教育アトラクション施設で、1,000を超える体験型展示を提供しています。

日本におけるSTEAM教育の事例

生徒自らが設定した課題の解決に向けて情報を収集・整理・分析し、周囲と意見交換をしながら学習を進めるSTEAM教育や探求学習。

日本でこれらの提供を実施しているところは、公立・私立の教育機関のほか、民間教育にもあります。

「スーパーサイエンスハイスクール」の指定
  • 日本の今後の科学技術を発展させるべく理科・数学の学習を積極的におこなう高等学校などに対して支援をする、2002年から始まった文部科学省の制度。該当する学校を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定しています。
「STEM教育研究センター」を設置
  • 埼玉大学では「STEM教育研究センター」を設置。日本型のSTEM教育について子どもたちとともに考えながら、ロボット技術やプログラミングを取り入れた“ものづくり教育”に励んでいます。
「科学の甲子園」の実施
  • 2011年に「広げよう科学の輪 活かそう科学の英知」をモットーにスタートした「科学の甲子園」。高校生たちがチームを組み、理科、数学などに関する筆記試験、科学技術を活用した実験・実習・考察を競います。


日本ではこれまでも「総合的な探究の時間」を用意してはいるものの、その時間を利用してSTEAM教育を実施できている機関はまだまだ少ないというのが現状

気になっている方は、自分の子どもが通っている学校で「総合的な探究の時間」をどのように使っているのか、一度確認してみるのがよいでしょう。

小学校の教育現場で取り入れられているSTEAM教育

ここでは、小学校の教育現場で取り入れられているSTEAM教育の事例をいくつか紹介します。

【浅羽北小学校】学校体育向け“STEAM Tag Rugby”デジタル教材開発

「STEAM Tag Rugby(スチームタグラグビー)」とは、楽しみ競い合うスポーツのなかで、身体能力のほか精神力・社会適応力・思考力・行動力の育成を目的とした事業です。

これまでの体育授業といえば、一般的なスポーツをただおこなうだけで、身体能力の向上をメインに構成されていました。

それに対し、STEAM Tag Rugbyでは、思考力をはじめとしたさまざまな能力を鍛えられるスポーツを用意。スポーツをしながら、プログラミングまで学べるように作成されているのです。

そんなSTEAM Tag Rugbyを学校体育に普及させるべく、静岡県袋井市の浅羽北小学校では、デジタル教材を開発・実証。

浅羽北小学校が開発しているのは、小学校高学年向けの指導教本および、教本と連動するワークブックです。
体を動かすだけでなく、ワークブックも利用することでより知能を刺激するほか、スポーツそのものに対しての理解もこれまで以上に深められるでしょう。

 
学校体育向け”STEAM Tag Rugby”デジタル教材開発

【筑波大学附属小学校】音楽×算数×プログラミングの横断的学習プログラム(Music Blocksの公教育導入実証)

筑波大学附属小学校が授業に取り入れている「Music Blocks(ミュージックブロックス)」とは、音楽と算数とプログラミングという3つの学習要素を備えた小学校向けの学習ソフト。

楽器やピッチなど音楽を構成する要素がブロックごとに分かれていて、そのブロックを組み立てることで作曲ができるしくみになっています。

このように音楽要素を前面に押し出すことで、算数やプログラミングに対する取っつきにくいイメージを払拭。

パズル感覚で楽しみながら取り組むうちに、自然と音楽・算数・プログラミングの知識が身に着きます。

なおMusic Blocksの発案者は、数学オリンピック金メダリストでありながら、音楽家かつ教育者でもある中島さち子さん。

音楽×算数×プログラミングの横断的学習プログラム(Music Blocksの公教育導入実証)

【長野・徳島・宮城県の小学校など】どこでも探究学習プロジェクト(探究学習プログラムの普及・促進)

「なりきりラボ」は、算数の本質を学べる探求学習プログラムです。

年々、需要が高まる一方で課題も多い探求学習。その課題を払拭する一貫として、長野県、徳島県、宮城県の小学校にてなりきりラボの導入が進められています。

なりきりラボは、教科書に書かれていることをただ覚えるのではなく、「なぜそうなのか」を生徒自身が深く探求することを目的としたプログラム。

たとえば確率を求めるにあたっては、公式を知るだけでなく、なぜそのような答えになるのかを探求します。

探求方法も身近な暮らしや、ゲームをもとにおこなうため、子どもは飽きずに取り組みやすいでしょう。

また、算数が暮らしに密接していることに気づかせ、算数や数字に対する興味関心を引き立てます。

どこでも探究学習プロジェクト(探究学習プログラムの普及・促進)

中学校の教育現場で取り入れられているSTEAM教育

続いては、中学校の教育現場で取り入れられているSTEAM教育の事例をいくつか紹介します。

【麹町中学校】教科学習(授業)の効率化と応用とのサイクルの実証(AI教材「Qubena」の公教育への導入実証)

AI教材「Qubena(キュビナ)」とは、タブレットを利用して生徒一人ひとりに合った学習指導をおこない、学習の効率化を目指す教材です。

東京都千代田区の麹町中学校では、Qubenaを数学に導入。

Qubenaで効率化され余裕のできた授業時間を使い、STEAM教育をおこなうといった指導をおこなっています。

実際、麹町中学校ではQubenaを使い始めてから、往来の数学学習に使われていた時間が半減。

残った時間で最新テクノロジー(ロボティックスやドローン、3Dプリンタなど)に触れるSTEAM教育がおこなえるようになったとのことです。

また、授業に向かう子どもたちの姿勢にも変化が起こっているとのこと。

問題解決のために自ら試行錯誤し、分からないところは教師に対して、もしくは生徒同士で積極的に意見を取り交わすようになったそうです。

STEAM教育が生徒たちの自主性を育むのに役立っていることがわかります。

千代田区立麹町中学校

【学校法人角川ドワンゴ学園 N中等部】AI機械学習(画像認識)を活用した課題解決学習プログラムの開発・製作・実証

「AI機械学習(画像認識)」とは、問題を解決するにあたって必要な思考力や考察力を身に着けるためのプログラムです。

学校法人角川ドワンゴ学園 N中等部の秋葉原キャンパスでは、これを導入。

生徒たちは例題となる「困りごと」に対して、ワークショップ形式で解決策を練り、その過程で問題解決スキルを磨きます。

また、グループで問題解決の方法を出し合うことは積極性の向上にもつながり、社会に出てからもミーティングやプレゼンの場で役立つでしょう。

AI機械学習(画像認識)を活用した課題解決学習プログラムの開発・製作・実証

【武蔵野大学中学校】「未来の教室」(学びの場)創出事業〜MaaSをテーマとしたSTEAMコンテンツ実証〜①

「未来の教室(学びの場)創出事業〜MaaSをテーマとしたSTEAMコンテンツ実証〜①」とは、MaaS(マース)を題材としたSTEAM教育の一貫です。

MaaSとは、次世代交通システムのこと。今以上に公共交通機関とITを結びつけるサービスを生み出し、より利便性を高めるためのシステムです。

東京都西東京市の武蔵野大学中学校では、これを導入。

生徒たちに近未来社会におけるサービスおよび、そのサービスを実現するうえで問題となるものごとに対する解決策も考案させます。

また、授業はグループを作りおこないますが、グループ作成には「Ai GROW」を使用。

Ai GROWによる気質診断と友人による相互評価をもとに、生徒の資質や能力を可視化することで、意見を出しやすい環境を整えています。

「未来の教室」(学びの場)創出事業〜MaaSをテーマとしたSTEAMコンテンツ実証〜①

高等学校の教育現場で取り入れられているSTEAM教育

高等学校の教育現場では、比較的多くSTEAM教育が取り入れられています。ここでは、高等学校の教育現場の事例を紹介します。

【東京都立園芸高等学校ほか】農業高校で取り組むスマート農業×STEAM学習プログラム

「スマート農業×STEAM学習プログラム」とは、専門高校ならではのSTEAM教育。生徒自身が提議した課題をもとに解決能力を育てます。

新しくこのプログラムを取り入れた東京都世田谷区の東京都立園芸高等学校では、農業に関係する近代テクノロジーの基礎に関する学習も導入。

近代農業についても意欲的に学べる環境を整えています。

そのほか継続してプログラムを実施している北海道旭川市の旭川農業高等学校では、昨年度に出した問題解決案を具体化。

より実践的な内容に迫っています。

農業高校で取り組むスマート農業×STEAM学習プログラム

【広島県立庄原実業高等学校ほか】未来の教室 LIFE TECH ACADEMY ™ in 広島県

「未来の教室 LIFE TECH ACADEMY™ in 広島県」とは、STEAM教育を取り入れた新世代カリキュラムの開発・実証をおこない、高校のカリキュラム改革におけるモデルケースをつくろうとする一貫事業。

広島県立庄原実業高等学校をはじめとした専門学校をメインに、広島教育委員会と連携を取り、開発・実証が進められています。

カリキュラムの内容としては、専門校らしい特化性を重視。生徒の資質や能力を伸ばすこと、そして教員の意識改革など、大がかりに取り組まれています。

動画コンテンツの作成や、ノートパソコンを一人一台専用にする など、学びの環境を整えることにも力を入れているのが特徴。

それらの取り組みにより、生徒の9割が「自分の学び方に変化あり」と好意的な意見を述べています。

広島県全体で鋭意的に取り組まれている事業のため、今後の展開も期待できるでしょう。

未来の教室 LIFE TECH ACADEMY ™ in 広島県

【徳島県立徳島商業高等学校ほか】「未来の教室(学びの場)創出事業)〜Robotics×Media Arts 社会課題解決・創造STEAMS PBLプログラム 全国の高校・中学校とともに〜

「未来の教室(学びの場)創出事業〜Robotics×Media Arts 社会課題解決・創造STEAMS PBLプログラム 全国の高校・中学校とともに〜」とは、その名前のとおり、ロボティクスやメディアアート、プログラミング学習に関する事業。

現代日本ではまだ特殊と思われる傾向にあるこれらの分野について学ぶことで、生徒たちの創造力を高め、仕事獲得機会の増加を目指しています。

導入高校は、徳島県立徳島商業高等学校、徳島県立吉野川高等学校、沖縄県立沖縄水産高等学校、沖縄県立真和志高等学校、北海道立旭川農業高等学校、北海道倶知安農業高等学校の6校。

特徴として、NYアカデミーのメンター制度をもとにして、「大学生メンター」を導入。

地元大学生がメンターとして生徒に寄り添うことで、授業や精神面でのサポートをおこなっています。

また新型コロナウイルスの影響を受けて、徳島県立徳島商業高等学校をはじめとして、当事業は全授業がオンライン化。

しかしオンライン授業でも、十分に授業が進められることも実証され、今の時代に合った指導をおこなっていることの裏付けとなりました。

「未来の教室(学びの場)創出事業)~Robotics×Media Arts 社会課題解決・創造STEAMS PBLプログラム 全国の高校・中学校とともに~

【長野県坂城高等学校ほか】高校「総合的な探究の時間」における社会課題解決 ~探究×ITで、社会につながる創造的な探究の実現~

「高校「総合的な探究の時間」における社会課題解決 ~探究×ITで、社会につながる創造的な探究の実現~」とは、解決能力を高めるためのカリキュラムを構築する事業。

長野県の坂城高等学校と軽井沢高等学校にて取り組まれています。

実際の授業では、より現実的な課題解決学習となるように、身近な企業への問い合わせやWebでのリサーチをおこなって課題を決定。

教師や大学生メンターの力も借りながら、グループごとに意見を出し合い、最終的には一人ひとりが解決方法を導き出します。

またその発展として、Webサイトの制作や、デザイン、プレゼン資料制作の学習も実施。

それぞれに必要な基礎スキルを学ぶほか、生徒自身が表現したいものを確かな形にするための能力を育成しています。

高校「総合的な探究の時間」における社会課題解決 ~探究×ITで、社会につながる創造的な探究の実現~

【新渡戸文化高等学校】社会課題やSDGsを活用した探究活動と受験勉強を両立できる教材の開発実証

「社会課題やSDGsを活用した探究活動と受験勉強を両立できる教材」とは、新渡戸文化高等学校とZ会グループがともに開発・実証をおこなっている教材。

持続可能な開発目標(SDGs)を探求しながら、そのなかで受験に必要な知識も身に着くように作成しています。

また、入試問題演習も教材に組み込まれているのが特徴。演習を通して、生徒はSDGs探求により受験に役立つ知識が身に着いていることを実感できるでしょう。

教材としてきっちりと体系づくられているため、テーマは事前に複数パターンが用意されていて、生徒はそこから選ぶ形になります。

しかし、SDGsの探求過程および結果は生徒によって異なり、答えはありません。

このような教育であれば、受験勉強をおろそかにすることもなく、生徒一人ひとりの主体性を育てることにつながるでしょう。

社会課題やSDGsを活用した探究活動と受験勉強を両立できる教材の開発実証

小中高の教育現場で取り入れられているSTEAM教育

ここでは、小学校~中学校、中学校~高等学校など、幅広く取り入れられているSTEAM教育の事例について紹介していきます。

【東京都の小・中学校】スポーツのワクワクから学び(数学・理科・プログラミング)への連結プログラム

東京都の小・中学校では、スポーツをとおして、子どもたちの主体性やコミュニケーション能力の発達を目指すためのプログラムを開発・実証しています。

実際にプレイするのは、「タグラグビー」。一般的なラグビーとは違い、タックルをはじめとした本格的なスポーツ要素を減らし、チーム戦略やプログラミングといった頭を使う要素を増やしています。

たとえば、「1対1の状況において適切な間合いとは」や、「2対2の状況においてパスすべきか、ランすべきか」を数学的に検証。

またはタグラグビーのボードゲームを使用し、勝利するための流れを試行錯誤するなかでプログラミングの考え方を身に着けます。

スポーツのワクワクから学び(数学・理科・プログラミング)への連結プログラム

【私立安田女子中学・高校/私立新渡戸文化中学高校】ルールメイカー育成プロジェクト 〜ルールを学び、対話的に課題解決する力を育む実証事業〜

私立安田女子中学・高校/私立新渡戸文化中学高校では、身近なルールを題材にして、生徒たちの問題解決能力や自主性を育成しています。

身近なルールに対して疑問に思うことを探すことから始まり、なぜそのようなルールがあるのか、本当に必要なのかを議論。

そのなかでさまざまな意見に触れ、違う意見を認める心や、それを踏まえた納得解を作る力を育みます。

なお、事業の一貫として議論するのは、生徒同士だけでなく教師や保護者とも対話を実施。

より幅広い意見を見聞きし、取り入れられるカリキュラムを作成しています。

ルールメイカー育成プロジェクト 〜ルールを学び、対話的に課題解決する力を育む実証事業〜

【飯塚市立穂波東中学校/福岡県立嘉穂総合高等学校】地域のチェンジメイカーを育成するエコシステムづくり〜ITを使った中・高・大の一貫のCreative PBL〜

飯塚市立穂波東中学校/福岡県立嘉穂総合高等学校では、革新的かつクリエイティブな人材(チェンジメイカー)の育成に力を入れています。

地域住民や企業の力も借りて設定した地域課題をもとに、課題解決サービスを実際に作成。

その後、オンライン学習教材「MOZER(マザー)」にて学習した内容をもとに、課題解決サービスをWebサイトや映像にまとめ、地域の人たちの前でプレゼンします。

また、そこで終了ではなく、プレゼンのフィードバックからさらなる課題設定をおこなうのが特徴。

より現実的な問題解決能力や、プレゼン能力を鍛えられるでしょう。

地域のチェンジメイカーを育成するエコシステムづくり〜ITを使った中・高・大の一貫のCreative PBL〜

【武蔵野大学中学・高校】アントレプレナーシッププログラムの汎用化に向けた実証事業

アントレプレナーとは、起業者のこと。武蔵野大学中学・高校では、アントレプレナーシップ教育の効果を実証するべく、指導をおこなっています。

アントレプレナーシップとは、いわばリーダーに必要な自主性やマインドセットなどを指します。

武蔵野大学中学・高校では、3年という時間をかけて、講義やワークショップのなかでスキルのほか精神性を育成。

効率のよい考え方が身に着くだけでなく、周りを巻き込む力や、メンタルコントロールのテクニックを磨きます。

長く時間をかけるだけあって、課題への取り組み方も一つひとつが細かく、実践的なのが特徴。

問題点を細かく把握することから始まり、解決策の試作は何度もくり返すほか、アイデアがより魅力的に伝わる発信方法の学習など、実用的なアントレプレナーシップが身に着きやすい内容です。

アントレプレナーシッププログラムの汎用化に向けた実証事業

【静岡聖光学院中学・高校】実社会と学校を繋ぐSTEAMプログラムの開発&実証実験

静岡聖光学院中学・高校では、社会課題を身近なものとして考えられる生徒の育成に着目。

そのための一貫として、学校だけでなく企業や研究者とも連携しています。

リバネスX静岡聖光学院では、「タンパク質不足問題」をテーマにてカリキュラムを開発し実施。

人工培養肉の技術開発現場のオンラインツアーや、創業者の講演も授業の一貫に取り入れました。

授業のポイントとなるのは、社会課題という大きなテーマをいかに生徒たちの身近な問題に置き換えるか。

生徒たちがリアルに想像しやすい教育を心がけることで、興味関心を引き立て、のちの社会参加促進にもつなげていきます。

実社会と学校を繋ぐSTEAMプログラムの開発&実証実験

習い事・民間スクールでのSTEAM教育

上記の教育機関のほか、習い事や民間スクールでSTEAM教育を学べる施設もあります。

近くにある教室がある場合は、ぜひ検討してみてくださいね!

また、「近くに教室がない」「コロナウイルスの影響で通うのが不安」などという場合には、オンラインでの受講もおすすめ。

オンライン授業を実施している施設も紹介していきます!

Life is Tech ! (ライフイズテック)

「Life is Tech !」は、国内最大級の中学生・高校生を対象としたIT・プログラミング教育サービス。

身近かつ最新のIT技術やプログラミング(スマホアプリやゲーム、Web映像、音楽、デザイン、3DCG、IoTなど)を学習できます。

学習内容はわかりやすさだけでなく、子どもたちが熱心に学び続けられるための工夫を心がけているのが特徴。

ITやプログラミングの知識がまったくない人でも、楽しんで続けるうちにスキルが身に着きます。

Life is Tech !を続ければ、1年間でプログラミングの基礎はもちろん、アプリやゲームを実際に作ることもできるようになるでしょう。

学習方法は通学するスクールタイプのほか、夏休みや冬休みを利用して集中的に学ぶキャンプタイプ、どこでも学習可能なオンラインタイプも用意。

オンラインタイプに関しては、ディズニーと提携しているのもポイントです。

ディズニーの世界観&キャラクターたちと一緒にゲームを進めるような感覚でプログラミングを学べるでしょう。

Life is Tech !(ライフイズテック)

LITALICOワンダー

「LITALICOワンダー」は、年長・小学生・中学生・高校生と幅広い世代のためのプログラミング教育サービス。

ゲームやアプリ、ロボットなどIT技術を駆使した「ものづくり」を学べます。

コースはゲーム&アプリ製作の基礎コースや
ゲーム&アプリ製作の発展コース、ロボット製作の基礎コース、最新デジタル機器(3Dプリンタやレーザーカッターなど)ものづくりコースなどを含めた計5つ。

興味のある分野に特化した知識とスキルが身に着きやすいでしょう。

また、授業内容はこれらのコースをもとにオーダーメイド。

一人ひとりの好みや能力に合わせて作成するため、スキルを伸ばしやすいほか、楽しく続けやすい傾向にあります。

なお、現在LITALICOワンダーでは、オンラインでの無料体験授業も受け付けています。興味のある方は、ぜひ体験授業からお試しください。

LITALICOワンダー

Crefus(クレファス)

「Crefus」は、年長から高校生までを対象としたロボット製作のなかでプログラミングを学べる教育サービス。

設立が2003年と早く、先進的であり、STEM教育のパイオニアでもあります。

ロボット検定の実施や、世界最大級のロボット競技会「FLL(ファースト・レゴ®・リーグ)」の日本代表選手輩出などの実績も持つCrefusは、ロボット製作に興味のある人にとってはとても魅力的に映るでしょう。

また、Crefusでは、そのほかの国際的なロボットコンテストに出場する生徒も多くいます。

さまざまな世界の人と触れ合う機会があるのは、グローバル化が進む現代において貴重です。

そのほか成果発表の場として、Crefus内での小さな大会も開催。ロボット製作やプログラミング技術だけでなく、自信や主体性も身に着きます。

Crefus(クレファス)

探究学舎

「探究学舎」は、5歳以上を対象とした“受験も勉強も教えない”教室です。

受験も勉強も教えないとはいえ、どの学びも学校の授業につながるのが特徴。

子どもたちの探求心を育むことに重きを置き、さまざまな体験型の授業を取り入れています。

たとえば歴史の授業であれば、武将が書かれたカードを用いた並べ替えゲームやカルタをするなど、五感が刺激されるように工夫。

五感の刺激は好奇心を強め、探求心を生むでしょう。そして、探求心によりものごとを深く理解しようとする姿勢を探究学舎は育むのです。

そんな探究学舎では、通塾のほか、オンライン授業も用意。また、通塾コースやオンライン授業コースも、毎週参加のほか短期間の集中講座を用意。

好みや希望に合わせて選べます。(※通塾の毎週参加コースは、現在運営を停止中)。

探究学舎

Tech Kids School(テックキッズスクール)

設立2013年の「Tech Kids School」は、日本最大級の小学生向けプラグラミング教室。

プロも使用するプログラミング言語の活用や、IllustratorやPhotoshopといったツールを用いるなど、かなり本格的なプログラミングとデザインスキルを学べます。

そのためもあり、スマホのアプリを製作しリリースした生徒や、プログラミングコンテストで表彰されるほどの生徒を輩出。

また、Apple社のティムクック氏に対して、開発した作品をプレゼンする機会が設けられるなど、ビッグニュースも見られます。

対面型だけでなくオンライン継続学習コースもあり、こちらはコーチのマンツーマン指導を受けられるのが特徴。

基本はオンライン教材で学習を進めることになりますが、月3回の面談とチャットサポートにて、コーチが学習をサポートします。

コーチはプログラミング指導のほか、生徒に合った目的設定もおこなうため、モチベーションも持続しやすいでしょう。

また、短期体験コース「Tech Kids CAMP」も実施中。

こちらも対面キャンプとオンラインキャンプがあり、オンラインキャンプでは、人気ゲーム「マインクラフト」を用いてプログラミングを学べます。

全国どこからでも、遊び感覚で本格的なプログラミングに触れられることでしょう。

Tech Kids School(テックキッズスクール)

STEMON(ステモン)

「STEMON」は、小学生向けのものづくり型STEM教育スクール。

カリキュラムの開発責任者は、世界的に有名なプログラミング教育ソフト「Scratch」の開発に携わった石原正雄さん。

ものづくりをとおして楽しみながら、科学や技術、数学を学べるオリジナルカリキュラムとなっています。

また、講師は「アジアSTEM教育連盟」規定のトレーニングを受講済みのインストラクターのみ。

このようにSTEMONでは、本格的なSTEM教育環境の整備に力を入れています。

しかし授業内容は決して堅苦しくなく、子どもたちが自主的に意欲をもって学べるように徹底。

触って、実験して、教えてもらったことを活かしさまざまなものを作ります。そのため、知識の応用力や創造力が身に着くでしょう。

STEMON(ステモン)

日本が抱えるSTEAM教育の今後の課題とは?

PCとロボットの画像

第一に、High Tech HighのようにSTEAM教育についての授業がとても少ないということが課題になります。

教員は教科指導のプロ。数学の教員は数学を教えることのプロフェッショナルであり、国語の教員は国語のプロフェッショナルです。

しかし、STEAM教育を教えるプロフェッショナルは非常に少ないのが日本の教育現場

「総合的な探究の時間」を受け持つ教員が、個人的の興味関心により独学で勉強をしながらSTEAM教育の時間を提供しているケースはあります。

ただ、教員を目指すための大学などでは、STEAM教育のプロフェッショナルになれるような教員養成課程があるかというとそうではありません。

日本でSTEAM教育が普及していないのは、こういうところも原因のひとつになっています。

総合的な探究の時間についてのグラフ画像


とはいえ、外部から人材を招き入れるとなれば、予算の問題も出てきます。

外部からの人材は教員免許が必要かどうかという面も含め、一筋縄ではいかない問題があるので、国を含めて今後どのように考えていくのかが課題となりそうです。

外部から招き入れるにしても、「総合的な探究の時間」を専門的にしている人材が日本にいるのかという点も気になるところ。

神野 元基
教育イノベーター/中央審議会特別部会臨時委員
少ないですが、いると思います。知識の伝達がしっかりとできる人を増やす活動をしていけば、今後も増えるものだと思います。

STEAM教育へ取り組むためのノウハウはそこまで難しいものではありません。ただ、すべてのことを知っていなければならないこれまでの教育の概念とは異なります。

先生は物事を知っておく必要があるわけでなく、それよりも子どもたちの伴走者になるということが大事。

つまり、一緒になって考えてあげることなんです。

子どもがひとつのテーマに興味をもったときに、教員側はそのテーマについてわからなくてもいいのがSTEAM教育の特徴です。

子どもたちと一緒に調べてみたり、調べ方をアドバイスしてみたり、また、こちらから疑問を投げかけてみたり。

このような教育のあり方は、これまでの一方通行な教育とは真逆なものです。この転換を図れるかというこが重要になるでしょう。

まとめ

今回は、中央教育審議会委員を務める神野さんを迎え、STEAM教育について深掘りしました。

これからの日本を支える人材を育てるために必要不可欠なSTEAM教育。物事についてあらゆる視点で考えることで創造力や表現力を育成する教育手法です。

現在の日本の教育現場には、他国と比べてSTEAM教育を伝える人があまり多くないのが現状。

しかし、将来自分の子どもが豊かな人生を送れるようにするためには、できるだけ早く知識を伝達していかなければなりません。

そのために少しずつですが、STEAM教育の魅力をアピールし指導できる人材の育成を進めています。

また、今回紹介した事例のように、STEAM教育を受けられる場所は全国各地にあります。

少しでも興味のある方は、子どもの「未来を生き抜くために必要な力」を養うためにもSTEAM教育を取り入れてみてください。