1994年、関西学院大学の学生により設立された、NPO法人「ブレーンヒューマニティー」。
当初は子どもたちへの家庭教師の派遣を主におこなっていましたが、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、被災した子どもたちへの支援活動を開始。
訪問学習指導からはじまり、不登校の子どもたちへの学習支援、海外でのワークキャンプや野外活動、居場所づくりや食事提供など、今では幅広い支援事業をおこなっています。
今回は、NPO法人「ブレーンヒューマニティー」の代表理事を務める、松本 学さんにお話を伺いました。
大学生が主体となって運営し、理事の半分は大学生という一風変わった非営利組織。約600名もの学生ボランティアが情熱を注ぐ支援活動の内容を、ぜひご覧ください。
さまざまな子どもたちを応援する団体「ブレーンヒューマニティー」
―本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、「ブレーンヒューマニティー」はどのような活動をしている団体なのかお聞かせください。
松本 学さん(以下、松本):NPO法人「ブレーンヒューマニティー」は、阪神淡路大震災で被災した子どもたちの学習支援というところから活動がスタートしている団体になります。
現在も引き続き、家庭教師や、困難を抱える子どもたちの学習を積極的に支援していて、子どもの貧困問題をはじめ、不登校状態の子どもたちへの学習支援、あとは小学生を対象とした野外活動でデイキャンプや宿泊キャンプをおこなっています。
また、中高生を対象とした海外でのワークキャンプも実施。発展途上国で植林体験をするようなプログラムとなっています。
キャリア教育では、高校の授業にお邪魔させていただいて大学生が自分たちの高校時代の経験を話しつつ、高校生の今の悩みに寄り添うといった事業も展開しています。
ほかにも子どもたちの居場所事業という形で、学童施設、中高生が利用できる施設、子ども食堂を運営しています。
ブレーンヒューマニティーは、そういった青少年の健全育成活動を全般的にやっている団体になります。
―小・中学校などの義務教育では学べないようなことも、活動を通じて子どもたちにたくさん提供されているな、という印象でした。ミッションなどもお聞かせいただけますか?
松本:子どもたちが多様な価値に触れて、自分たちの選択肢を広げる機会を提供するというミッションがあります。
子どもたちがいろいろな機会、もちろん学校で学ぶということも大事なのですが、それ以外にも、学校外での体験活動を通して選択肢の幅を広げることを大切にしているので、法人内でもさまざまな活動やプログラムのメニューを増やしているところです。
関西学院大学の家庭教師サークルからはじまった支援事業
―「ブレーンヒューマニティー」が設立に至るまでの経緯を具体的に教えてください。
松本:もともとは我々関西学院大学の家庭教師サークルからはじまっている団体で、関西学院大学の学生が自分たちで家庭教師を募集して派遣する活動を、震災前までやっていました。
そのあと阪神・淡路大震災が発生して、ちょうど時期も1月だったので、受験前の中高生が避難所の段ボールを机に勉強している姿を目にすることもあり、何かできないかなと。
考えた末、自分たちがおこなっている家庭教師を無料で派遣したり、避難所に行って子どもたちに勉強を教えたりしていく活動を始めてみようとなりました。
きっかけは被災地での学習支援だったのですが、その後大学生が課題感を感じてやりたいと思ったことをどんどん事業化していき、そこから今のいろいろな事業がはじまっていった経緯になります。
そういったなかで子どもたちから、そろそろ外で遊びたいとか、キャンプに行きたいという勉強以外の声が上がり、そこから野外活動のプログラムが始まりました。
また、家庭教師での訪問先の子がたまたま不登校の状態で、不登校状態にある子どもの支援は当時少なかったので、不登校の子どもたちに寄り添う学習支援のプログラムを作ろうかという声も上がり、取り組みを始めました。
―ホームページを拝見させていただいたのですが、今も運営は関西学院大学の学生がやっているのですよね。
松本:そうですね、今も関西学院大学をはじめ、近隣の大学生たちと一緒に団体を運営しておりまして、法人の理事の半分は大学生がやっているような形になります。
―肩書に関西学院大学と書いてあったのでびっくりしました!基本的にはずっと大学生の運営で今に至るという感じなのですか?
松本:はい、創業のときからずっと大学生が主体で活動してきていますね。私は職員としてここで働いているのですが、職員もあくまで大学生の活動のなかで必要なので雇用したというような位置づけになるので、大学生が雇用している建て付けにはなっています。採用面接なども大学生がおこなっているんですよ。
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活動や体験を通して育む「生きる力」と「可能性」
―ボランティアに参加したい学生や、お子さんをプログラムに参加させる保護者の方にはどのように「ブレーンヒューマニティー」を活用してもらいたいですか?
松本:まず、年間だいたい500~600人ぐらいの大学生にボランティアのご登録をいただいていて、割と大学生は一年中いつでも活動してもらえるかなと思います。
そのなかでどういう風に活動しているかというと、例えばキャンプだったら、どういうキャンプをするか企画立案のところからはじまって、そのキャンプをするためにはいくら予算がいるかも割り出します。当日の運営も大学生がやっていて、終わったあとは決算をし、アンケートの集計まで全部大学生がやっているような流れになります。
ですので、いろいろなことにチャレンジしたい方にはとても向いているかなと。子どものキャンプのボランティアに参加しました、という表面上のものだけではなくて、しっかり自分の力でお客さんにサービスを提供するところも含めて、大学生には考えて欲しいなと思います。
活動内容は、社会人とやっていることは変わらないので、自分の力をつけたい、自分のやりたいことを実現したい大学生たちにぜひ参加して欲しいです。学生だからといって制限されていることはないんだよ、ということを一緒に活動しながら大学生には伝えていきたいと思っています。
―なるほど。ただのお手伝いではなく、主体性を持って動けるというのは大学生にとっても大変よい経験になるのではとすごく感じました。
お子さんを参加させる保護者の方に対してはいかがですか?
松本:ありがとうございます。例えば、子ども食堂とかは気軽に子どもたちが集まれる居場所としてご活用いただけますし、キャンプでは子どもたちだけでテントを張って寝たり、自転車で兵庫県を縦断するとか少しチャレンジングなことに挑戦したりできるので、子どもたちが主体性を発揮でき、新しい一面を見られるような機会を提供したいですね。
小学生から高校生まで幅広いお子さんにサービスを提供できるかなと思っています。
―自転車で横断することもあるのですか?キャンプの寝泊まりは自分たちでテントを立てて?
松本:あります。自転車で兵庫県を3日間かけてとか。キャンプに関してはキャンプ場を借りていて、そこで一人用のテントを用意しているので、みんなでテントを張って寝て、ご飯も自分たちで調達します。
―すごいですね、なかなかそういった野外活動は学校の授業でできないですよね。
松本:そうですね、なかなかそこまでは学校教育では攻められないというか、先生方も見きれないと思うので、そういった少人数でチャレンジングなことをするというのは、この活動のひとつの魅力かなとは思っています。
―参加する小・中学生がキャンプを通して学べることや、身につく力があれば教えてください。
松本:すごいふわっとした表現になるのですが、「生きる力」というのはすごくつくかなと思います。
自転車のツアーは、スマホのアプリではなく紙の地図を見ながら自分たちで相談してどの道を行くかを決めるので、そういったところで仲間たちと一緒に考えて、力をあわせて目的を達成する力がつくと思っています。
―決まった答えに沿って進むのではなくて、自分でどうやったらもっと上手く進めるかを楽しんで考えていて、とてもいいプログラムだなと思いました。
支援の輪で子どもたちに笑顔を!輝く未来を届ける取り組み
―「ブレーンヒューマニティー」は、たくさんの支援者に支えられていると思うのですが、今後応援したいと考えている方に向けて何かアピールポイントがあれば教えてください。
松本:そうですね、今おこなっている事業でいうと、「子ども食堂」は、地域の皆さんから食材や金銭的なご寄付で運営しています。
両親が共働きでひとりでご飯を食べている孤食状態の子どもに対して、地域で安心して過ごせる居場所を作っていければと思っていますので、そういったところでご協力、ご支援をいただければ大変嬉しいなと思います。
―子ども食堂を拝見させていただいたのですが、すごく内装がかわいいですよね。献立とかも大学生の方が考えているのですか?
松本:ありがとうございます。カフェ休業日をお借りしているのですが、もともとのカフェがすごくおしゃれなんです。
献立も近くの大学の食品栄養学科の学生たちが、栄養を考えて作ってくれていて、実際の運営や、調理するのも全部大学生。年の近いお兄さんお姉さんが身近にいることで気軽に相談できる場所というのを目指して運営できればと思っています。
―最近ですと、自宅での学習や、学びをもっと広げるためにタブレット・Wi-Fiの支給もおこなっていると聞いたのですが。
松本:そうですね、コロナになってなかなか学校に行きづらく、学習の機会が減っている子たちにオンラインの学習支援をおこなっております。
もしご家庭にタブレットやWi-Fi環境がなければ、お貸しして家でも十分に学習できる環境を確保する取り組みを、去年のまさに4月の緊急事態宣言のタイミングで始めたところです。こういった機材などもご寄付でご提供いただいています。
―コロナウイルスの感染拡大で、今後ますますオンラインでの学習環境の必要性が求められていると思うので、支援いただけると嬉しいですよね。
松本:やはりこういうコロナのような不測の事態や、地震などの自然災害もそうですけど、どうしても子どもによって学習する環境に格差が出てきてしまうので、そういったところを少しでも埋めるお手伝いができればと思っております。
―今後の「ブレーンヒューマニティー」の展望や、団体としてどういった活動をしていきたいかなどを教えてください。
松本:我々としては軸がふたつあって、子どもたちという軸と、大学生という軸。両方、展望はあったりするのですが、子どもたちの話でいくと、やはりすべての子どもたちが平等に同じスタート地点に立てるお手伝いをしたいです。
今でいうと経済的な格差、コロナ渦でなかなか外に出られない不安、長期の入院や病気。そういった子どもたちが、ほかの子と同じスタート地点に立つにはどうしたらいいのかということを考え、そこの補助には力を入れていきたいと思っています。
また、子どもたちが主体的に自分たちで考えて、「生きる力」をつけるお手伝いを今後も引き続きしていきたいです。
もうひとつの軸である大学生ですが、
今後少しでも彼らの将来にとってプラスになるような活動というのを深めて作っていきたいなと思っています。今までは個人がそれぞれ自主的にいろいろなことを学んではいたのですが、それプラスで我々社会人が彼らの学びをより深めるような関わり方をしていけたらと考えています。
さらに、こういった社会課題とかNPOの活動に関心のある社会人をどんどん社会に輩出していく団体を目指していきたいです。
―私もこういったボランティア活動を大学時代に知ることができればよかったととても感じました。今の大学生にはもっとブレーンヒューマニティーの活動を知ってほしいなと思いました。
松本:はい、それこそ今コロナ禍のなか入学した学生は学校外の活動に出会う機会が非常に少なくなってきているので、ぜひそういう学生に届けば僕らとしてもすごく嬉しいです。
僕らと一緒に社会の課題を解決できるメンバーを探しているというのはもちろん、一緒に成長していける人を募集しているので、ぜひ興味があれば、ご参加いただければ嬉しいなと思います。
―本日は貴重なお話をありがとうございました!
実際の活動の様子を知りたい方はAmeba塾探しの公式YouTubeをチェック!
「ブレーンヒューマニティー」の実際の活動の様子は、Ameba塾探しの公式YouTubeで近日公開予定です!
活動内容やボランティアについて詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
■取材協力:ブレーンヒューマニティー