旅行や帰省、仕事など、さまざまなシーンで利用機会のある航空機は、私たちの生活に欠かせないもの。一度でも搭乗経験がある方なら、その快適さについてはご存じでしょう。
なかには空港で働くスタッフを見て、「私も航空業界で働きたい!」と憧れを持った方もいるのではないでしょうか。
しかし、航空業界へ就職するには、専門の資格や高い英語力が求められます。特に、大手エアラインは競争率が高く、夢を叶えるのは簡単ではありません。
そこで今回は、11年連続で内定率100%を達成している、岐阜県の航空技術者養成校「中日本航空専門学校」の学校長・安藤弘治さんにインタビューをしました。
航空業界に興味のある方、将来、スムーズな就職を果たしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
創立して51年になる航空技術者を養成する学校
ー本日はよろしくお願いします。まずは「中日本航空専門学校」はどのような学校なのか、簡単にご説明をお願いします。
安藤弘治さん(以下、安藤):「中日本航空専門学校」という名前のとおり、本校は「航空技術者を養成する学校」です。
本校の強みは、5種類の航空整備士の資格をはじめとする、さまざまな資格を在学中に取得できることです。特に、航空整備士の資格取得者数は全国一です。
卒業生は大手エアラインだけでなく、民間の飛行機・ヘリコプター関連企業や警察航空隊を中心とする官庁関係など、全国各地で活躍しています。
今年で創立51年となりますが、実は、最初は整備士を養成する1学科しかなく、学生数も当時はわずか35人ほどでした。
それが現在では「航空整備科」「航空生産科」「エアポートサービス科」の3学科を設け、学生数も約800人にまで増えました。
ー3つの学科があるのですね。それぞれどのようなことを学べるのでしょうか?まずは「航空整備科」から教えてください。
安藤:「航空整備科」では、ライン整備・ドック整備・ヘリコプター整備をおこなう「航空整備士」のほか、電気・電子関係のスペシャリストを養成しています。
本校の航空整備科は、養成人数と取得できる資格の種類が全国でもトップクラスです。
たとえば、飛行機・ヘリコプターのエンジンには「ピストンエンジン」と「タービンエンジン」の2つがあり、これらの種類や大きさによって必要な整備士の資格が違います。
最近の航空機は、小型機でもタービンエンジンを装備した機体が多いのですが、その資格が取れる学校は今のところ本校のみです。
また、一等航空整備士の養成もおこなっています。一般的には取得まで6、7年を要する資格ですが、ANAやJALとの企業連携を活かし、2~4年での短期取得も可能です。
ー次に「航空生産科」で学べることを教えてください。
安藤:「航空生産科」は、航空機の製造技術者を養成する学科です。ここではCAD・CAMを中心とした設計、それにもとづく製造、修理および検査を学びます。
就職先は、エアラインよりも川崎重工業や三菱重工業などの製造メーカーが多いイメージです。
生産科の取り組みでもっともユニークなのは、航空機RV-4の組立て実習があることですね。RV-4の部品をアメリカから仕入れ、それを3年間かけて組立するんです。専門学校で機体をつくっているのは、本校だけではないでしょうか。
ほかにも、航空機の生産現場に欠かせない「カーボンファイバー」という複合材の製造技術も学べます。
カーボンファイバーの製造には「オートクレーブ」という機材が必要ですが、本校のような大きな規模の設備を持っている学校は全国でも珍しいと思います。
ー続いて「エアポートサービス科」について教えてください。
安藤:「エアポートサービス科」には、「グランドハンドリングコース」と「キャビンアテンダント・グランドスタッフコース」の2つがあります。
「グランドハンドリングコース」は、航空機の地上支援業務を学びます。手を振って航空機を誘導する、「マーシャリング」という仕事のほかに、車両を使った機体のプッシュバックや航空貨物の搭降載など、さまざまな仕事について学ぶことが可能です。
ちなみに本校は、「第1回 航空専門学校 グランドハンドリング・コンテスト」で優勝実績があるんですよ。
それから「キャビンアテンダント・グランドスタッフコース」では、いわゆる接遇担当スタッフを養成しています。
空港内でグランドスタッフが、お客さまの発券業務や機内誘導などを担当する一方で、機内に入れば、キャビンアテンダントがお客様を接遇します。
学内での指導のほか、約半年間のインターンシップの機会を設けているのが、このコースならではの特色ですね。
中部国際空港セントレアや羽田空港などの現場で実際に接遇をおこない、最終的には社員がするような対応まで経験します。インターンシップを終えた学生たちは、ほぼプロ並みに成長して帰ってくるんですよ。
内定率100%を誇る中日本航空専門学校の4つの強み
ー中日本航空専門学校には「4つの強み」があるそうですが、具体的にお聞かせください。
安藤:本校の強みとして、「施設・設備」「就職支援体制」「資格サポート」「現場のプロが講師」の4つがあります。
まず1つ目の強みである「施設・設備」についてですが、本校には十分な実習授業をするための施設・設備の環境が整っています。
特に、航空整備科の施設・設備に関していえば、実習のための商用機を28機も用意しており、学内に広い格納庫も備えています。
航空整備士の養成において、航空局の指定基準では「最大20人につき1機の機体が必要」と定められていますが、本校では「10~12人に1機」という、指定基準を上回る割合の機体を持っています。
学年専用やコース専用の機体を備えているので、直接機体に触って勉強する時間を多く取れるというわけです。
また、「キャビンアテンダント・グランドスタッフコース」では、本物の機内や空港カウンターと間違えてしまうほどのモックアップを教室内に完備し、このリアルなモックアップ設備を使った接遇教育をおこなっています。
そのほか、バーチャルリアリティー(VR)施設の充実も目玉の1つです。
VR施設の活用案の例としては、「グランドハンドリングコース」で学ぶ、航空機を誘導路に出す「プッシュバック」という業務が挙げられます。プッシュバックに使う車両は非常に大きいうえ、航空機自体がなければ実践できません。
このような物理的に導入が難しいものについては、VR施設を活用して、より実践的な教育をしていこうと考えています。ちょうど今年から導入準備に入っているところです。
ー本物に近いリアルな設備とVRの両方で実習がおこなえるんですね。次に2つ目の強みについて教えてください。
安藤:2つ目の強み「就職支援体制」についてですが、実は、このコロナ禍においても、本校の求人倍率は2.2倍もあります。
おかげさまで11年連続、内定率100%を達成している状況です。
航空業界には、さまざまな就職先があります。確かに大手エアラインの関係各社は苦しい現状ですが、貨物関係の整備や中小型機を使った民間の航空会社、官庁関係は、ほとんど影響を受けていないんですよ。
それに本校は、企業との連携が強みでもあります。ANAやJAL、川崎重工業、三菱重工業を筆頭に、約100社の企業と「鵬志会」という後援会を結成しているんです。
企業から本校へさまざまなサポートをいただいたり、逆に本校から企業へ学生を紹介したりと、企業後援会を活かした就職支援もおこなっています。
ー就職難で苦戦を強いられる学生には心強いですね。
安藤:そうですね。それから就職にも関係する3つ目の強み「資格サポート」についてですが、本校では、累計で3,500名以上の学生が、航空機やヘリコプターの整備士の資格を取ったうえで就職しています。
資格取得の累計実績と取得可能な資格種類の豊富さは、本校の大きな強みです。
ひと口に整備士の資格といっても、「航空整備士」と「運航整備士」があります。このうち「航空整備士」は、エンジンを降ろすなどの細かな作業まで対応できる資格です。この資格が取得できるのは、全国でも本校を含めて3校だけ。
また、ヘリコプター整備の資格を取得できるコースも貴重です。どこの学校でも用意されているものではありませんから。こちらは全国でわずか3校だけです。
整備士は航空整備科の学生向けの資格ですが、航空生産科やエアポートサービス科でも、さまざまな資格を取得できます。たとえば、CAD利用技術者試験、非破壊検査技術者技量認定試験、英検などですね。
このように本校では、どの学科でも将来的に役立つ資格を取得することができます。
ー在学中に、さまざまな資格を取れるサポート環境が整っているのは大変魅力です。
安藤:それから4つ目の強み「現場のプロが講師」ですが、本校では、ANAやJAL、川崎重工業や三菱重工業など、航空業界の現場から出向してくる、優秀な講師陣による教育をおこなっています。
実は、本校の講師の60%ほどがOBで構成されています。私もこの学校の8期生です。だからこそ、お兄さん的な立場で学生の相談に乗ったり、サポートしたりできます。これは間違いなく、本校ならではの強みですね。
その一方で、どうしても現場の知識は、企業で働く現役プロに比べれば多くありません。
もちろん、講師は教育に携われるだけの十分な知識を持っていますし、現場への派遣研修もおこなっています。
それでも現場の方々が、長い時間をかけて積み重ねる経験までは、なかなか会得できないわけです。
そこで、現場経験の豊富な現役プロに講師として出向していただいて、コラボレーションしながら授業や実習をおこなっています。
それぞれ役割を分担して「おいしいところを重ね合わせた教育」ができていると思いますね。
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特待生や奨学金制度など独自の支援が充実
ー航空系の専門学校ということで、学費の心配をされる方もいらっしゃるかと思います。費用面での支援やサポートはあるのでしょうか?
安藤:まず、本校の50周年記念ということで、一昨年から3年間、受験料を無料にしています。これは本校を受験される方、全員が対象です。
次に、入学金や授業料についても、いろいろな独自支援を用意しています。
1つ目は本校独自の特待生制度、「特待生選考試験制度」です。「本校特待生」「航友会(同窓会)特待生」「鵬志会(企業後援会)特待生」の3つがあり、それぞれ入学金や授業料の免除をおこなっています。
2つ目は工業高校の高校生に関わる「ジュニアマイスター奨学金制度」。資格や検定の取得状況によって称号がもらえるのですが、ゴールドまたはシルバーの称号を持っている方は、入学金の減免対象となります。
ほかには、卒業生の子どもの入学金を25万円全額免除する「卒業生子女奨学金制度」や、卒業生から紹介を受けた方の入学金を半額免除する「同窓生推薦奨学金制度」などもあります。
ー特待生のような優秀な方だけではなく、「この学校で学びたい」「頑張りたい」という気持ちを抱く学生へのサポートが充実していますね。
安藤:そうですね。頑張る人には、いろいろサポートしたいなと思っています。学校だけでなく、たとえば日本航空技術協会による奨励金の支給など、外部機関の支援もありますから。
もちろん本校の独自支援だけではなく、本校は認可校ですので、一般的な日本学生支援機構の奨学金や高等教育の修学支援制度も利用できます。
それから近年は、留学生の受け入れ支援にも積極的に取り組んでいます。留学生の入学金と授業料については一部減免していますし、日本語が上達してN1の資格を持っている方には、10万円の給付をしています。
コロナ禍で留学生の受け入れが思うようにはいきませんが、最終的には40名前後の留学生受け入れを目指しているところです。
留学制度で航空業界に必要な英語力が身に付く
ー中日本航空専門学校は、留学制度も充実していますね。
安藤:そうですね。航空業界は、技術やコミュニケーションにおいて、外国と切るに切れない関係にあります。
ましてやキャビンアテンダントやグランドスタッフの仕事は、英語を話せなければ務まりませんよね。
そのためエアポートサービス科では、ほかの学科よりも英語の教育時間を増やしたり、TOEICの指導をおこなったりします。でも、もっと実践的な英語までレベルを上げなければなりません。
そこで本校では、キャビンアテンダントやグランドスタッフの志望者向けに、選択制の長期留学コースを設定しています。このコースは2年課程なので、留学期間を含めて3年で卒業可能です。
ニュージーランドに本校と契約している学校がありますので、1年間の休学手続きを取ったあと、ニュージーランドの学校で実践的な英語を学び、2年生に復学をして就職を目指すイメージですね。
ちなみに留学期間中は、休学扱いになるので授業料はかかりません。
ーとても魅力的な制度ですね。ほかに、エアポートサービス科以外の学生も利用できる留学制度はあるのでしょうか?
安藤:はい。本校は5つの国に提携校を持っており、アメリカ・フランス・中国の3校とは、互いの学校を行き来する交流事業をおこなっています。
まず、アメリカのシアトルにある「サウスシアトルカレッジ」。ここに航空整備コースがあります。短期留学なら2週間、長期留学なら1年間の留学が可能です。
フランスの提携校は「リセ・エアバス」という学校です。エアバス技術者の養成が専門の国立校で、3週間の留学プログラムを連携しておこなっています。
それから、中国の提携校「雲南外事外国語職業学院」です。ほかにも、16か国ほどの国で語学留学をおこなっています。
ーこれだけ留学制度が充実しているのは、何か理由がありますか?
安藤:留学制度を充実させているのは、やはり英語が好きな子や上達したい子には、環境を整えてあげたいという想いがありまして。予算も留学先も選択肢を多くして、さまざまな留学プログラムをつくっています。
航空業界において、英語は多かれ少なかれ必要な能力です。エアポートサービス科はもちろん、航空整備科や航空生産科でも必要です。なぜなら、マニュアルがすべて英語ですから。
日本で開発した航空機なんてほんのわずかで、基本はアメリカやヨーロッパから機体がどんどん日本に入ってきて、国内を飛んでいるわけです。そのような現状ですから、マニュアルも全部英語なんです。
技術的なやりとりにおいても、外国人とコミュニケーションを取らなければならないときがあるでしょう。もちろん、全員ではありませんが。
留学によって得られる効果は、特にアメリカの提携校でおこなう1年間の長期留学の場合が顕著です。1年留学すれば、それなりの英語になってきますからね。
私の印象に残っているのは、韓国の大学で開催された国際航空シンポジウムでの英語スピーチです。そこで今年、本校の学生2人が最優秀賞をいただきました。
2人とも長期留学を終えて帰ってきた学生なんです。英語系の他校学生や社会人も参加するなかでの受賞ですから、本当にびっくりしました。
また一昨年には、英語力を買われて内定を取った学生もいます。航空生産科の学生ですが、英語が達者だから「ぜひとも入社してほしい」と企業から打診がありました。
愛情・優しさ・厳しさを持ち合わせる講師陣
ー中日本航空専門学校には、どんな講師がいらっしゃるのか気になる方もいると思います。講師の方の雰囲気やお人柄はいかがでしょうか?
安藤:おそらく、航空専門学校となると、講師にお堅いイメージを持つ方もいるでしょう。航空業界は、安心・安全が第一ですから、規則をきっちり守ることは大変重要なことです。
実際の現場では、騒音のなかでの意思疎通が求められるため、声の大きな講師は多いです。物事もはっきりと言います。だから最初のうちは「怖い」「厳しい」と感じる学生がいるかもしれません。
でも普段は、柔らかく明るく学生に接している講師が多いですね。みんな人柄は本当に優しいですよ。
私も入学したばかりの1年生からは「怖い」というイメージを持たれがちですが、1年、2年、3年と進み、授業以外でも話すようになると、学生も「怖くない」とわかってくれるみたいです。
本校の母体である学校法人・神野学園では、共通する建学の精神として「技術者たる前に良き人間たれ」を掲げています。
これを踏まえて、本学では学生のみなさんに「正直で正々堂々とした人間」になってほしい」と願っているんです。
たとえば「失敗したけど、言うのが怖いから言わない」となれば、航空業界では、下手をすれば大事故にもつながりかねません。ですから本校では、講師・職員が一致団結して、愛情と優しさと厳しさを持って学生を指導しています。
ただ、私としては「厳しさ」を視覚的にやわらげたくて、「なかなかさん」という公式キャラクターをつくりました。
賛否両論いろいろあったんですが、学校に対してやわらかく楽しいイメージを持っていただきたくて。LINEスタンプにもありますので、ご活用いただけると嬉しいですね。
「学生ファースト」で講師・職員が一丸となって指導
ー最後に、入学を考えている学生・保護者の方にメッセージをお願いします。
安藤:中日本航空専門学校の学校施設・教材は、全国でもトップレベルです。本校では「学生ファースト」を心がけ、講師・職員一丸となり、愛情と自信を持って教育・指導に取り組んでいます。
私たちが本校の学生に願うのは、「正直で正々堂々とした人間になってほしい」ということです。
また「失敗をおそれず、チャレンジする心」を持ってもらえるよう、資格・検定の取得や多彩な国際交流事業、学内・学外におけるクラブ活動や技能コンテストにも注力しています。
本校の卒業生は、整備・製造・空港関連のどの業界からも高い評価をいただいており、11年連続で内定率100%を達成しました。
ありがたいことに、このコロナ禍においても、多くの企業から採用をもらっている状況です。
ぜひ岐阜の自然豊かな(とはいえ山奥ではありません!名古屋まで電車で30分の距離です)本校で、将来の夢に向かって充実した生活を送ってください。
ー本日は有益なお話をありがとうございました!
■取材協力:中日本航空専門学校