みなさんは子どもの夢を育む「ドリームマップ®授業」というものをご存知でしょうか?
ドリームマップ授業とは、経済産業省の起業家教育促進事業に採択されたプログラムとして2004年から日本各地でおこなわれている出張授業のことです。
これは、子どもが自由に夢を描いたり、自分の目標をクラスメイトにアウトプットしたりすることで人生を豊かにするための能力が身につく人気の教育プログラム。これまで全国の児童約10万人が体験しています。
今回はドリームマップ授業がどのように子どもの人生を豊かにしてくれるのか、NPO法人 こどものみらいプロジェクト ゆめドリの代表理事・三輪裕子さんにお話を伺いました。
子どもの夢をビジュアル化するドリームマップ授業とは?
―本日はよろしくお願いします。まずは、NPO法人 こどものみらいプロジェクト ゆめドリが、どのような活動をしているのか教えてください。
三輪 裕子さん(以下、三輪):子どもたちが自由に未来を想像する力を最大化するための教育プログラムの開発や実施などに携わってます。
主な活動としては、小学生から大学生という年代に対して主体的に生きる力を育むドリームマップ授業という出前授業をおこなっていますね。
ードリームマップ授業はどのように実施されているのですか?
小学校や大学などに出張して授業をおこなっています。ただ、何回かに分けて授業をおこなうのではありません。
その日は「ドリームマップ授業の日」として、1時間目から6時間目まで丸一日かけて授業をおこなっています。
ードリームマップ授業について、具体的に教えてください。
三輪:ドリームマップを直訳すると「夢の地図」になるのですが、一般的に夢って職業をイメージすることが多いですよね。大人になったらパティシエになりたいとか。
子どもたちも「夢は何?」と聞かれれば、「大きくなったらどんな職業につくのか」と考える子どもが多いです。
ドリームマップ授業では、そうした考えに囚われるのではなく、夢というものを自分の身近なものとして感じてもらえるようなステップを踏んでいます。
まずは最初に自分が大好きなことや、思わず身体が動き出すほどわくわくすることを、しっかりと考える時間を設けていますね。
このステップを踏むことで、大人になったときにどんな自分だったら幸せなのか、ということをビジュアル化できるようになります。
それを授業の最後にみんなで発表することで、互いの夢を応援し合える関係性の実現を目指しているんです。
ー自分が「何になりたいか」よりも先に、「自分自身のことを知る」ことが授業として学べるんですね。
三輪:そうですね。大人になっても意外と自分のことって、わかっているようでわかっていないことが多くて。世間や友達の間で流行っているから、それを好きだと思いこんだり、周りに合わせたりすることもあると思うんです。
だからこそ、ドリームマップ授業が「それは本当に自分のなかで大切にしたいことなのかな?」と立ち止まって考える時間になればいいなと。
自分が幸せだと感じることは、人によってみんな違っているものです。子どもたちにはそうしたことを感じてほしいなと思っています。
「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」
ードリームマップ授業で重要となる「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」について教えてください。
三輪:「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」の図を見ていただきますと、1というのが「現在」であり今の自分を示します。
2が「夢」や「目的」、3が「行動手段」になります。この3つの関係性や仕組み、約束事を成り立たせているのが「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」です。
これは今の自分をしっかり理解し、夢というものが明確になると、そこに向かうための「行動」や「手段」が自然と浮かんでくるという法則(考え方)なんです。
よく似た仕組みで「地図アプリ」があります。地図アプリを起動すると、最初は地図と自分の現在地が表示されますよね。そこで目的地を設定すると、ルート案内が開始されます。
だけど、目的地を設定するとしても、具体的に設定しないと正しいルートがわかりません。たとえば、「東京ディズニーランド」に行きたいときは、目的地を「東京ディズニーランド正面入り口」に設定しますよね。
夢や目的も同じ。自分が目指している夢や目的を明確にすることが重要になるんです。
その一方で、地図アプリに不具合があって現在地が正しく表示されなかったら、目的地がはっきりしていても、ルート案内が始まりません。
だからこそ、自分がどんなことが好きで何をしたいのかという現在地も重要になります。
夢を描く前に今の自分の現在地をしっかり見つめてみる、まずはそこから始めてみましょうというのが「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」です。
しかし、今の自分がわかって「夢」が明確になっても、すぐに行動に移すのは難しいものです。
そんなときはもう一度、ドリームマップと向き合ってみるんです。もしかしたらこれは本当に自分のやりたいことではないかもしれない。と気付いたら、もう一度「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」を繰り返していくんですね。
ーときには立ち止まって振り返ったり、もう一度考え直すことが、「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」にとって大切なんですね。
三輪:そうです。繰り返すことによって、今の自分の現在地も明確になっていき、自分が思い描く幸せのかたちも具体的になっていく…。それによって行動が起こせるようになるんです。
ドリームマップ授業で育んでいる“主体的に生きる力”
ードリームマップ授業で育んでいる“主体的に生きる力”とは、どのようなものなのでしょうか?
三輪:私たちは“主体的”というものを、「結果や道筋がわからなくても自分の意志で行動できること」と考えています。
さまざまな変化に順応していく必要がある世の中で、何が正解になるのか、どんなことをすれば正解に近づけるのか、はっきりとした答えを見つけるのは難しいですよね。
そのため、これまで以上に「何が正解かわからないけどやってみる」という挑戦する力が必要だと考えています。
そういった力の原動力になるのは、やはり自分が大好きだと思っていることとか、思わず身体が動き出すほどの衝動を覚えるようなものだと考えています。
それを少しでも見つけることができると、“主体的に生きる”ということにつながるのではないでしょうか。
ードリームマップ授業に参加することで、子どもたちがどのようなことを学んで成長していけるのか、より詳しく教えてください。
三輪:子どもたちと関わるなかで感じているのは、お互いを認め合ったり、応援し合ったりするきっかけになっている、ということですね。
ドリームマップ授業のなかで、自分がわくわくすることを見つけたり、自覚していなかった長所を見つけたりすると、それをクラスの友達同士で共有し合います。
最後には自分が描いた夢も発表するのですが、そこでみんなそれぞれが違うということを体感するんですよ。
たとえば、1クラス35人の教室内で、大人になったらなりたい職業を聞けば、同じ子どもがいるかもしれません。
しかし、その職業で何を大事にしたいのか、また、その職業を通してどんな大人になりたいのかを考えると、誰一人として同じ夢を描く子どもはいないんです。
そして、そこに現れてくるのは、その子が「大事にしたい価値観」。それは、職業が変わったとしても変わらない軸になる、そんな風に育っていきます。
そこで子どもたちは、自分が描いた夢は本当に自分だけのものであり、相手の夢も相手だけのものなんだなと感じるんですね。
「みんな違ってみんなよい」ということを体感し、お互いを認め合い、応援し合うような関係性になっていく。それが子どもたちの日々を変えていくきっかけになっているのではないかと思います。
ー自分の夢を考えるだけでなく、ほかの人の夢を共有して理解する。子どもたちはいろいろなことを学んで成長することができるんですね。
三輪:そうなっていたらいいなと思います。地域によっては幼稚園から中学校まで1クラスしかなくて、ずっと一緒のメンバーというところもあるんですね。
しかし、ドリームマップ授業に参加すると、昔から知っている関係なのに初めて知ったということがたくさん出てくるんです。よほど仲のよい間柄でないと、なかなか深いところまで話をする機会が少ないんですね。
子どもたちがお互いを知り、認め合うことができるのは、大人になったときに一番力を発揮する源になるのではないかと、そのように思います。
ー家庭でも子どもに「将来について考えてほしい」という保護者の方は多いかと思います。そうした方に向けたキャリア教育におけるメッセージなどをいただけますでしょうか。
三輪:そうですね。私たちは「夢が湧き出る場をつくる」ということを一番大切にしています。
そのため、私たちが子どもの夢を引き出すとか、描けるようにしてあげるとか、そうしたことは考えていません。子どものなかにあることが湧き出るような、安心安全の場をつくることを大切にしているんです。
ー子どもに将来を考えさせるのではなく、考えることができる「場」を用意するんですね。
三輪:そうですね。まずは子どもが「何を言ってもいいんだな」と感じるところがスタートなんです。
「これを言ったらダメって言われる」とか「バカにされるんじゃないか」という気持ちがあると、本当に思っていることは言い出せません。
私自身も中学生の子どもが2人いるんですけど、「この子は何を言ってるんだろう」とか「それは違うだろう」と言いたくなることがいっぱいあります(笑)。
そんなときは、この子にはそう感じている理由があると考えるようにしています。母親がわからなくて見えないことでも、何か理由があるのではないかと受け止めるんです。
私たちの合言葉は「夢が湧き出る場をつくる」ですから、家庭でもそれができるように、否定から入るのではなく、一旦受け止めてみる。そうすると、親が想像もしていなかった理由が見えてきたりすることがあります。
そんな風なやりとりを積み重ねていくなかで、「何を言っても、言ってみること自体はOKなんだ」という時間をどこかでつくることができたらいいなと思います。
ー子どもたちは井戸のような存在になるんですね。井戸から好きなだけ水を汲んでよいし、汲まなくてもよい。ただ、それを受け止めるようなコミュニケーションが大切だと。
三輪:そうですね。湧き方も子どもによって違いますから。ちょっとの刺激で間欠泉のように湧き出る子どももいれば、本人も気づかないぐらい少しずつ湧き出ている子もいます。
子どもによってペースやタイミングが違うので、まずは焦らず、子どもの言葉を受け取ってみることができるとよいですね。
NPO法人 こどものみらいプロジェクト ゆめドリが目指していること
ー今後の展望についてお聞かせください。
三輪:今はドリームマップ授業を全国11の拠点を中心に実施していますが、これを日本全国あちこちで実施できるようにしていきたいと考えています。
また、子どもたちを支える保護者のみなさんや先生にも、私たちが大切にしている考え方や子どもへの接し方などを伝えていくことできたらよいと思っています。
ー今も企業の協賛や個人の支援者からの応援があるとは思うのですが、今後さらに応援を増やすためのアピールポイントなどがあれば教えてください。
三輪:私たちの一番の特長は、公立の小中学校にも届けている「ドリームマップ授業」という丸一日の出前授業だと思っています。
というのも、ワークショップや一般公開されているドリームマップ授業もありますが、受講される子どもは結構限られてしまうんですよね。
たとえば、そういうことにもとから興味がある子どもだったり、親御さんがすごく熱心だったりとか。
だけど、公立の小中学校にはいろいろな子どもがいます。そんなすべての子どもたちに1回だけでも自分の現在地を見つめて自由に夢を描いてほしい。それを今後もこだわっていきたいなと思っています。
しかしその一方で、公立の小中学校だと丸一日の出前授業に対して多くの予算が出ません。こどものみらいプロジェクト ゆめドリはNPO法人ですが、まだまだ必要な予算の半分くらいしか確保できていないのが実情です。
どんな境遇や状況にある子どもたちでも、自分の未来を自分でつくっていけるきっかけを知ることは大切だと思います。
私たちの活動に共感していただける企業や団体さんがいらっしゃれば、ぜひ応援いただけるとありがたいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
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ドリームマップ®は一般社団法人ドリームマップ普及協会の登録商標です。
https://dream-map.co.jp/
NPO法人ゆめドリは、ドリームマッププログラムの学校での実施運営を担っています。
出前授業は研修・認定を受けた上で実施されています。
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■取材協力:NPO法人 こどものみらいプロジェクト ゆめドリ