グローバル化が進む昨今、英語や外国語を学ぶため、英会話教室などに通いはじめる人が増えています。
異文化交流において、理解力、コミュニケーション力の習得は欠かせません。
そのなかで、国際社会に貢献する意欲や能力を持つ人材育成に尽力しているのが「神田外語グループ」。
高等教育情報誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション
」 と株式会社ベネッセホールディングスが作成した「THE世界大学ランキング日本版2021」教育充実度の分野において、全国の大学のなかから「神田外語大学」が13位に選出されるなど、学生や先生たちに支持されています。
今回は、そんな「神田外語グループ」の理事長である佐野 元泰さんにインタビューしました。
企業理念や将来のビジョン、それに向けての取り組みなど、60年以上の歴史を持つ「神田外語グループ」ならではの魅力をたっぷりと語っていただきました。
“コミュニカティブな英語教育”を一番に考えた教育
ーまず、「神田外語グループ」は、どのようなことを目的としたグループなのでしょうか。
佐野 元泰さん(以下、佐野):神田外語グループには、4つの教育機関と2つの関連企業があります。
教育機関としては、専門学校である「神田外語学院」、大学である「神田外語大学」、社会人向けにビジネス英語研修をおこなう「神田外語キャリアカレッジ」、そして、0~12歳までの児童向けに早期英語教育をおこなう「神田外語キッズクラブ」。
関連企業としては、福島県にある英語研修施設兼リゾートホテル「ブリティッシュヒルズ」、そして、神田外語グループの学生向けに卒業式の袴のレンタルや学生マンションの仲介などで支援をおこなう「神田外語マネジメント・サービス」という会社があります。
神田外語グループは、1957年に神田外語学院の開設からはじまり、以来60年強の歴史を持っています。
当時は「セントラル英会話学校」という名称で開設し、その後「神田外語学院」に名称を変更しました。そして、1987年に「神田外語大学」を開学。
「神田外語学院」開設以降、“言葉は世界をつなぐ平和の礎”という理念に基づき、国際社会の一員として世界に貢献する意欲と能力を持つ人材の育成に注力しています。
ー「神田外語学院」や「神田外語大学」をはじめとした「神田外語グループ」ですが、開設に至るまでの背景をお聞かせください。
佐野:英語教育はいろいろな方法がありますが、私たちは“使える英語・会話のための英語”というものを日本人に身につけてもらいたいという想いが強くありました。
当時の「神田外語学院」から少し特殊であった教育方針のひとつが、“コミュニカティブな英語教育”。
それが50年前くらいから支持されはじめ、1976年に「神田外語学院」として専門学校の認可を受けました。
コミュニケーションをとれるというのは、単に言葉を使うだけでなく、相手の国の文化を理解し自国の文化も伝えられるかどうか。
言葉だけでない相互のコミュニケーションが大切だと考えています。
これらを教えるのに2年間では少ないと思い、4年制である大学が必要だと思いました。
そして、さらなる知識を持った日本人を育てるべく、約30年前に「神田外語大学」を開学するに至ります。
まずは専門学校生・大学生である18歳くらいの人たちを対象としてきましたが、大学を運営して少しずつ知見がたまってきたところで、もう少し広くあまねくやってみたいと考えました。
そこで、「神田外語キッズクラブ」「神田外語キャリアカレッジ」などを設立。
日本人が海外で活躍できるような素地をうまくつくっていきたい、語学を柱として子どもから社会人まで一生を通して関われるようなグループにしていきたい、そういう想いがありましたね。
ー「神田外語グループ」が大事にしていること、強みとしていることは何でしょうか。
佐野:もっとも大事にしているのは、先ほども言ったように“コミュニカティブな英語教育”。これは語学教育における強みでもあります。
また、国際社会における交渉やディベートのような場面で、お互いがwin-winの関係をつくるためのコミュニケーションができるような教育を大事にしています。
“言葉は世界をつなぐ平和の礎”という建学の理念のもと、言葉が通じれば人と人との気持ちがつながると考えています。
相手に対するリスペクトや異文化理解、または自分自身のバックグラウンドを理解し相手とどう接したらいいかを考えることで、互いが接点や妥協点を見つけられ、それがひとつのステップになると思っています。
理解が広がることで世の中が少しずつ平和になっていくのではないか、ということをイメージしていますね。
それをさらなる強みとするため、「神田外語大学」では、2021年の4月から国際教養系の学部「グローバル・リベラルアーツ学部」を開設しました。
平和のために行動し、課題を解決できるような人材を育てる
ー「グローバル・リベラルアーツ学部」はどのようなことを目的としているのでしょうか。
佐野:国際教養系の学部はさまざまな大学にありますが、私たち「神田外語グループ」は、「Global Liberal Arts for Peace(平和のためのグローバル教養)」を大きな目的としています。
平和のために行動し、それを実現する人材を育成するべくスタートしました。
教育において、最近では「リベラルアーツ教育」などといわれていますが、自分で物事を考える力や解決する力をいかに育み実践できるかをテーマに考えています。
ー「グローバル・リベラルアーツ学部」のカリキュラムは、どういった内容となっているのでしょうか。
佐野:入学から半年間は「グローバル・チャレンジ・ターム」という期間ですね。
日本の子どもたちは恵まれています。大きな争いごともなければ、世界に比べ貧困の割合も低い。
ところが世界に目を向けると、同じ世代の若者たちが争いや貧困などさまざまなことに直面している現実があります。
そのようなことを理解しながら「自分は何のために学ぶのだろう」「どうなりたいのだろう」と、自らの学びに対する問いを考えるのがこの半年間。
本当の世界を知り、自分が望むことに対してどう学び続けるかというモチベーションや目的をつくらせる機会だと思っています。
そしてこの「グローバル・チャレンジ・ターム」では、リトアニア、インド、マレーシア・ボルネオ、エルサレムの国や地域へ実際に行くという約3週間のフィールドワークがあります。
現地で同世代の子たちと話をしていろいろなことを感じながら、「日本に住む自分は何をすべきなのか、何を学ぶべきなのだろうか」ということを実際に考えてもらいます。
ー新型コロナウイルス感染症の影響で海外への入国が制限されている現状がありますが、教育において工夫などはされているのでしょうか。
佐野:今年は残念ながら海外へ行くのは難しい状況です。
そこで、今年においては「海外スタディ・ツアー2.0」と題し、オンラインで1週間ずつ4ヵ国をつないでしまおうと考えました。
オンラインということを逆手に取り、実際に現地に行くとなると1ヵ国のみになるところを、4ヵ国の学生たちとつながれるという内容です。
さらにもうひとつのプランとして、英語を公用語とする語学研修施設「ブリティッシュヒルズ」に泊まり込み、英語漬けの日々を過ごす2週間の合宿を実施します。
現地の空気感や自分の知らない環境に置かれたときのサバイバルスキルというのは人を変えると思うんです。
現地に行けなくても、初めての環境で知らない文化を体験させたいと考えました。
今回は約60名の学生たちが合宿をしますが、2週間他人と暮らすわけですから、やはり精神的にきついと感じるでしょう。
それをどう乗り越えていくかということも含め、自分のなかに変化をもたらすような体験をさせることで自分を高め、さらに学びを深めてほしいですね。
ー「海外スタディ・ツアー2.0」のあとは、どのような授業科目を受けられるのでしょうか。
佐野:9月には、何を学び続けるべきなのかをきちんと見える化させ、そこから本格的な学びがスタートします。
そして3年次の後期にアメリカの「ニューヨーク州立大学」に留学します。
自分がこれまで学んだことを、どう実現しようかということを実践する機会になると思っています。
欧米という世界中から人々が集まる環境で、社会を世界基準で理解して自分のものにする。
物事に対して積極的にアプローチして、課題を解決できるような人材になれるのではないかと思います。
自立学習で“生涯学び続けられる”Lifelong Learnerに
ー「神田外語グループ」では、学生のモチベーションを持たせ続けるということも大切にしているそうですね。
佐野:私たちの教育のベースにあるのは、学び続けるということ。
学び続けて結果が出る、結果が出たときの喜びを持ち続ける、そうすることでさまざまなことに挑戦できるようになると考えています。
語学を学ぶことは、スポーツと似ています。日々トレーニングを重ねていかなければ習得できません。逆にいえば、学び続けない限り習得するのは難しいですよね。
地道な作業ですが、何度も同じパターンを練習することでようやくコミュニケーションがとれるようになります。
「神田外語グループ」は「ラーナーオートノミー(自立学習推進能力)」に着目し、自ら学び続けることのできる人材を育成する「自立学習研究所」を持っています。
簡単にいうと“モチベーション教育”ですね。学生たちにどうやってモチベーションを持たせるのか、ということが目的です。
一度何かを成し遂げられたら、その成功体験を別のことに応用できるようになりますよね。
結果が出るまでのプロセスにおいても、つまらないと思いながら学ぶのでなく、いかに面白く学べるかといったアドバイスも含めて考える研究をしています。
Lifelong Learner、つまり“生涯にわたって学び続けられる人”。「神田外語グループ」は、すべての機関においてこのLifelong Learnerになれる人材を育成しています。
それは、前向きに学び続けて人生を謳歌することがとても大切だと思っているからです。
佐野:「神田外語大学」には、約200名くらいが自由に学べる「SALC(Self-Access Learning Center)」という自立学習センターがあります。
ラーニングコミュニティのような、放課後や授業の合間に使える自習室のような場所ですね。
ここでは、友達同士でコミュニケーションをとりながらいろいろなことを学べるようになっています。
佐野:充実した教材のほか、常駐のアドバイザーもいて、学生の質問に対しさまざまなアドバイスをしてくれています。
また、専門学校の「神田外語学院」でも大切にしている自立学習。
授業のなかで教えるだけでなく、授業外でも学べる場所をつくり、そこで学びに対するアドバイザーのような人材を置いて学生へのサポートをしています。
これも先ほど言った「学び続けるためにどう考えられるか」というソリューションに向けての提案ですね。
ー「ラーナーオートノミー(自立学習推進能力)」を育てることで、どのような結果につながるのでしょうか。
佐野:たとえば「神田外語学院」の場合、TOEIC300点だった学生が2年間で800点に上がったという例があります。
また、「神田外語学院」には、4年間で専門学校と大学を卒業できる「3年次編入学」や、大学編入学後、留学や教職課程が履修可能な「2年次編入学」などといった大学編入学制度というものがあります。
特に語学において優秀な学生であれば、さまざまな大学が受け入れてくれるんですね。
努力を積み重ねて結果を出すことができた学生たちは、最終的に幸せを掴むことができるのです。
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英語教育を通したSDGsへの取り組み
ー「神田外語グループ」では、SDGsへの理解を深めるための取り組みも進められているそうですね。
佐野:そうですね。SDGsをどういうふうに体現するかということを今考えているところです。
特に「神田外語大学」においては、「グローバル・リベラルアーツ学部」のなかでSDGsの理解を深める講演会などをおこなっています。
語学を学ぶ学生たちは、SDGsに興味を持っている人が多いです。実際に社会貢献に関する活動をしている学生もたくさんいます。
そこで「神田外語大学」では、秋に1週間「SDGsウィーク」という形で、学生たちがさまざまな社会活動を通してSDGsへの興味関心を深めるイベントを実施しています。
また、「ブリティッシュヒルズ」では、中高生にSDGsを伝える英語のレッスンをしています。SDGsを通して英語を覚えようというような取り組みですね。
神田外語グループでは、SDGsの17の目標のなかから、各機関に合わせた取り組みを考えています。
私たちとしては、SDGsをどのような形で捉え、学生たちに伝えるかということに重きを置いています。
「神田外語グループ」の強みを活かした施設の共有
ーここからは、「神田外語キッズクラブ」「神田外語キャリアカレッジ」「ブリティッシュヒルズ」について伺います。まずは「神田外語キッズクラブ」についてお聞かせください。
佐野:「神田外語キッズクラブ」は、いかにして子どもに“コミュニカティブな英語教育”をするかを大学の先生方と教授法を議論しながら、できるだけ最適な形で教えられるように展開している機関です。
今のところ、都内12教室200クラス以上で約1,700名の生徒数を抱えています。
教育の質を保ちながら、神田外語グループのノウハウを活かしたレッスンにこだわっていますね。
ここでもやはり子どもたちがどう楽しく学び続けられるかということを考えていて、日々工夫を凝らしながら教育をしています。
ー「神田外語キッズクラブ」の強みというのはどういったところにありますか?
佐野:専門学校や大学の施設を利用したイベントで、日本人学生、外国人留学生、教員など、年齢や国・人種の異なるたくさんの人々と交流する機会が持てることをはじめ、日々のレッスン内で学習した英語表現を使ってコミュニケーションを試みるなど、学んだことをアウトプットできる環境があることですね。
これは、さまざまな教育機関を展開する「神田外語グループ」だからこその強みといえると思います。
たとえばハロウィンの時期になると、SALCなどを含めた「神田外語大学」の構内を利用し、先生と生徒約1,000名がイベントを楽しみます。
そのほか「ブリティッシュヒルズ」を利用し、英語の環境にどっぷりと浸かった体験型の研修というのも実施しています。
そこでは、インストラクションをしてくれる外国の先生とコミュニケーションをとりながら、英語を使ってお菓子をつくるアクティビティもあります。
ーそのようなイベントを通じて、子どもたちはどのように成長していくのでしょうか。
佐野:英語は難しいものですが、先生の指示がなかなか理解できない子も見よう見まねでつくってみるんですね。
一生懸命つくったら、ちゃんとお菓子ができあがるんです。
こういうコミュニケーションのなかで子どもたちは、先生の言うことを一生懸命理解していきます。
単語などを覚えることよりも、初めて聞く英単語やフレーズに耳を傾け、それをいかに理解して成功までもっていけたかが重要。
「物をつくれた、自分で理解できた」という成功体験の一つひとつが自信につながり、子どもたちは英語に対して苦手意識を持たず、前向きに取り組もうと思うんです。
この「神田外語キッズクラブ」では、体験を通して英語の楽しさを教えています。
ほかの英語教室などではできない試みかと思いますね。
ー先ほど少しお話に出ました「ブリティッシュヒルズ」は、どのような施設なのでしょうか。
佐野:「ブリティッシュヒルズ」は“パスポートのいらない英国”をキャッチフレーズに、英語を公用語とする語学学習環境が整ったなかで、数多くの語学教育実績のある外国人講師が中心となって研修をおこなっています。
主に中高生の英語研修の場として使用されており、海外研修へ行く事前学習として、または3年間を通した英語学習の仕上げの研修として利用されています。
現在年間300~400校の学校に「ブリティッシュヒルズ」を利用いただいています。
ここでも、語学を使う楽しさや成功体験を自信につなげ、学び続けてもらいたいという神田外語グループならではのアプローチをしています。
佐野:「ブリティッシュヒルズ」は、これからさらにニーズが高まるのではないかと思っていますね。
海外は共働きの家庭が多く、夏休みになると子どもたちを3週間くらいサマーキャンプに出すのがひとつの文化としてあります。
今、日本でも共働きの家庭の増加と、サマーキャンプの文化が認知されてきたことから、ブリティッシュヒルズでも長期休みに合わせた2泊3日や1週間ほどのイングリッシュキャンプをおこなっており人気が高まっています。
ーでは、「神田外語キャリアカレッジ」についてお聞かせください。こちらは、社会人向けの研修をメインとしているようですね。
佐野:「神田外語キャリアカレッジ」は、法人の英語研修を中心におこなっています。現在はJR様をはじめ、多くの企業様が研修をされていますね。
日本人は、能力は高いのに語学で損をしていると思うんです。
日本国内ではビジネスがうまくいっていても、世界を相手にしたときにいまひとつうまくいっていない面があるのではないかと思っています。
ほかのアジア諸国と比べて中国人や韓国人のほうが進んでいる現状もありますよね。
これを何とかしなければならないと思い、企業様に向けて「ブリティッシュヒルズ」なども利用しながら、語学学習を提案しています。
語学というのは学んだだけではなかなか自分のものにはなりませんが、学び続けるモチベーションを保てるよう講師やスタッフがサポートしています。
ー今後の展望がありましたらお聞かせください。
佐野:児童英語教育においては、指導者教育ですね。「神田外語キッズクラブ」においては、「児童英語講師養成講座」というものにも力を入れていこうと思っています。
やはり、教える先生たちが学んで理解することが大事だなと。小学校英語というのは非常に大切なんですね。
この時期に英語が身につけば、語学に対する苦手意識を持つことなく成長することができるんです。
教育方法を理解した先生が増えれば、英語を身近に感じられる子どもたちも増えるのではないかと思います。
「児童英語講師養成講座」については、最小限の時間で学べるよう、オンライン版の実施も計画中。
また、
子どもにとってもっとも近いのは、やはりお父さん・お母さんですよね。将来的にはお父さん・お母さん向けの講座というのも考えています。
ー本日はお時間をいただきありがとうございました!
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