近年、男子高校や女子高校が共学化にシフトするケースが増えています。
共学を導入する理由はさまざまですが、社会における多様な価値観やグローバル化など、時代の移り変わりが背景にあるのかもしれません。
そこで今回は、2022年4月より共学化を伴った学校改革をおこなう「東北学院中学校・高等学校」を取材。副校長の岩上 敦郎先生と、教育研究部長の髙橋 裕一先生に、具体的な取り組みや共学化に踏み切った経緯を伺いました。
現代社会を生き抜く力をつけたい方は、ぜひご一読ください。
137年の歴史!キリスト教に基づく教育をおこなう学校
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、「東北学院中学校・高等学校」がどのような学校なのか、概要を教えてください。
岩上 敦郎先生(以下、岩上):「東北学院中学校・高等学校」は、1886年の春に、宮城県仙台市の中心部で、6名の生徒と2名の教師によって、小さな私塾「仙台神学校」をスタートしたのが始まりです。
もともとキリスト教(プロテスタント)の牧師を養成する学校でしたが、設立から5年後に「東北学院」と名称を変え、普通教育を授ける学校となり、137年の歴史を刻んできました。
創立以来、本法人に所属する各教育機関(大学院・大学・本校・榴ケ岡高校・幼稚園)では、一般の教育、研究活動とともに福音主義キリスト教に基づく宗教教育を一貫しておこなっています。
2005年には、仙台駅からJR仙石線で5駅先の小鶴新田駅を下車して徒歩約10分の場所にある田園地帯に移転しました。
校舎内には、普通教室のほかに、毎朝の礼拝や多目的に使用可能な約2,000席の礼拝堂、天体観測ドーム、図書室、各教科の特別教室、食堂や売店などがあります。
また、10万m2近い広大な校地には、人工芝のサッカー場、野球場、テニスコートと、全天候型400mトラックを持つ陸上競技場があることも特徴です。
体育館内には、バスケットボールコートが4面とれるメインアリーナ、220mの周回ランニングコース、剣道場、柔道場、空手道場などがあり、そのほかに合宿所、弓道場、雨天練習場などの施設も揃っています。
本校は創立当時から男子校でしたが、2022年度から共学化し、2023年度には中学生約500名、高校生約1,300名、計約1,800名の生徒が学んでいます。
多様な教育的ニーズに応じて「未来学力」を育てる
ー東北学院中学校・高等学校では、どういった「学校改革」をおこなっているのでしょうか?
岩上:本校は、2022年4月より「共学化を伴う学校改革」を始動しました。改革により目指す学校像は、“ともに生きる力を育む、未来志向で生徒中心の学校”です。
近年、グローバル化の進展により、人種、民族、言語、文化、ジェンダーなど、社会において多様な人々との協働が求められています。
そういったなか、本校では、“未来学力を育む学校”を目指しています。
未来学力とは、「高い志と意欲を持ち、膨大な情報からなにが重要かを主体的に判断しながら、自ら問いを立ててその解決を目指し、新たな価値を生み出していく力」のことです。
未来学力を育むためには、「多様性」を尊重する姿勢を養い、「主体性」「創造性」を伸長することが重要と考えたのが、共学化にした経緯です。
創立135年を誇る男子校でありましたが、2022年度入学の中学1年生と高校1年生から女子も受け入れ、3年かけて共学化を完成していきます。主体性を高めるため、制服は定めず、服装規定も最小限に留めました。
ー「未来学力」を育てるための取り組みについて詳しくお聞かせください。
岩上:多様性の尊重として、グローバル教育の充実に努めています。
コロナ禍以前も、海外研修、英語集中研修、短期・長期留学制度、留学生の受け入れなどに取り組んできましたが、コロナ禍以降、新たな取り組みを始めました。
まず1つ目は、海外大学進学への積極的なサポートです。
2020年度には、一般社団法人 台湾留学サポートセンターの仲介により、台湾の5大学と連携協定を締結し、優先的な大学入学と、奨学金給付を提供できるようになりました。
また、2021年度には、国際教育プロバイダー(株)アイエスエイとの間で「アイエスエイ 海外大学進学推薦制度」協定を締結し、英語圏の大学への推薦入学制度を導入。2023年度には、テンプル大学ジャパンキャンパスの指定校推薦枠もいただきました。
2つ目は、“英語「を」学ぶ環境”と“英語「で」学ぶ環境”の創出です。
4年前に共学化を検討し始め、共学後のコース編成として、女子の希望に応えられるように「国際コース」の設置も検討しましたが、実現しませんでした。
しかし、今後の日本の実情を考えたときに、インバウンドにしてもアウトバウンドにしても、あらゆる場面で海外との交流が盛んになることは明確です。したがって、英語を始めとする語学力を身につけた人材の育成は急務との認識は常にありました。
このような背景もあり、前述の国際教育専門会社や台湾大学進学専門団体と連携して、国内外での英語研修、留学、海外大学進学にチャレンジする生徒を増やしてきました。
その後、コロナ禍の影響で海外研修や留学ができなくなったため、校内にて対面やオンラインでの英語研修をおこなってみましたが、コロナに罹患して出席できない生徒にはなんの対策も取れなかったんです。
また、その校内英語研修も単発的な行事にとどまっていたうえに、海外の大学に進学したいと考えている生徒に対して、年間をとおして必要な英語力をつけさせる方策が学校としては授業以外にないとも思っていました。
さらには、本校が共学化する前年に、インターナショナルスクールに通う多数の小学生が中学校の説明会に来てくれていたのですが、その方々の希望に応えられなかったことも残念でした。
そこで、これらの課題解決として、2023年度より、ケンブリッジ・インターナショナルが認定するオンラインスクール「Nisai British International Online School」と提携し、「TG International(通称:TGインター)」を開設しました。
TG Internationalは、Nisai Global School認定校です。Nisai Japan株式会社と提携する認定校は、文部科学省 一条校(※1)としては、静岡聖光学院中高に次いで全国で2校目、東北では初となります。
これにより、年間を通じ、夕方から夜間にかけて、オンラインによって“英語「を」学び”、英語力を向上させる講座や、ケンブリッジ式カリキュラムに沿って、各教科を“英語「で」学ぶ”講座を、希望制で格安に受講できるようになりました。
受講した生徒がどのように成長していくのかが楽しみです。
髙橋 裕一先生(以下、髙橋):ほかにも本校では、コロナ禍以前から、グローバル教育の一環として、「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」(※2)に取り組んでいます。
具体的な取り組みとしては、総合的な学習(探究)の時間「3L希望学」の充実で、「3L」とは、本校のスクールモットーである「LIFE LIGHT LOVE」の頭文字を取ったものです。
3L希望学の目標は、「ESDとキャリア学習をおこない、主体的、創造的、協働的に取り組む態度を育て、未来を展望し、自らの使命を考え、生きる力を育てる」こと。
各学年の学習内容は、中学1年生は地域理解・ESD(環境・防災学習)、中学2年生は職場体験・ESD(児童労働・職場体験)、中学3年生は卒業研究、高校1年生はSDGsグループ研究、高校2年生は平和学習・個人研究、高校3年生は進路研究などです。
(※1)一条校(いちじょうこう)とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第1条に掲げられている教育施設の種類およびその教育施設の通称。
(※2)持続可能な開発のための教育とは、将来にわたって持続可能な社会を構築する担い手を育む教育。
「LIFE LIGHT LOVE」を目標に「夢の実現」を
ーオープンキャンパスなどの告知があればご紹介ください。
髙橋:夏季オープンスクールでは、学校紹介、授業体験、部活動見学、キャンパスツアー、個別相談などをおこないます。
秋季オープンスクールは、入試を主とする説明会、部活動見学、キャンパスツアー、個別相談などをおこなう予定です。
オープンスクールの詳しい内容は、公式ホームページでご確認ください。
百聞は一見に如かず!みなさんのご来校を心からお待ちしております。
ー最後に、入学を検討している読者にメッセージをお願いします。
岩上:本校は、日々の教育活動のなかで、「キリスト教的人格」を身につけることを目標としています。
キリスト教的人格とは、生徒一人ひとりが、個人の尊厳を互いに大切にし(LIFE)、学問や科学の成果によって新しい時代を切り開き(LIGHT)、隣人愛をもって地域や世界に仕える(LOVE)こと。
その目標達成のため、質素・勤勉を奨励し、勉学だけでなく、課外活動にも力を注ぎ、大学入試に対しては、総合型選抜・一般選抜対策のみならず、多数の協定校推薦枠・指定校推薦枠・海外大学推薦枠を用意して対応しています。
文武両道は簡単なことではありませんが、たとえ多少大変だったとしても、入学してよかった、卒業してよかった、と思ってもらえる学校を目指して、日々改革・改善に努めておりますのでどうぞご期待ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:東北学院中学校・高等学校