認定NPO法人「地球学校」の“ことばの力”で人と人をつなぐ活動!外国ルーツの子どもたちに豊かな未来を

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日本に暮らす外国の方は数多くいますが、「日本語がわからない」「居場所がない」などの問題を抱える人も少なくありません。

特に子どもたちのなかには、言葉や見た目の壁につまずき、サポートを必要としている子も。

今回は、さまざまな国の方に向けて、日本語サポート・多文化交流事業をおこなう認定NPO法人「地球学校」団体理事長の丸山 伊津紀さんと、地球っ子教室担当で理事の辻 雅代さんにお話を伺いました

来日して日本語に困っている方が周りにいる、お子さんのクラスメイトに外国ルーツの子どもがいる方は、ぜひご一読ください。

自分にできることを考えてみませんか。

日本語サポートと多文化交流で人と人をつなぐ活動

教室内で子どもたちが勉強している画像

ー本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人「地球学校」の事業について教えてください。


丸山 伊津紀さん(以下、丸山):NPO法人地球学校」は、さまざまな国のみなさんが日本語学習を通じて豊かな未来を描けるように、多文化交流活動をおこなっています。

現在NPO法人設立から22年目、横浜で認定NPOを取得してもうすぐ10年です。

私たちの事業は大きくわけて、日本語サポート事業と多文化交流事業のふたつがあり、日本語サポート事業は「日本語教室」と「地球っ子教室」のふたつに分かれています。

日本語教室は、年齢に関係なく、日本語を学びたいすべての方がレッスンを受講できる、有料の教室です。

一方で地球っ子教室は、子どもだけを対象とした無料の支援です。

地球学校は、NPO法人の設立以前から多文化交流団体として外国人への日本語のサポートをおこなってきましたが、親の都合で来日して、日本の学校で困っている子どもたちのために無料の教室を開催したいという思いから、理事の辻がこの地球っ子教室を2003年3月からスタートしました。

来日した子どもたちの居場所「地球っ子教室」

子ども2人がホワイトボードに文字を書いている画像

ー地球っ子教室にはどのような子どもたちが来ていますか?


辻 雅代さん(以下、辻):基本的には日本の小学校・中学校に通う、外国ルーツの子どもが中心ですが、幅広い年齢の子どもを受け入れています。

たとえば、日本の小学校に入学する予定の未就学児も、年長から受け入れ可能です。

中学生以上に関しても、母国で中学校卒業後に進学せず来日した子どもも迎え入れています。

たとえば、中国では9月入学なので日本より半年以上早く卒業を迎えるのですが、中学校を卒業している子どもは日本の中学校には入れない現状があるからです。

中学校卒業後、日本の高校を受験しようと来日したのに行くところがなく、そのような状況で日本語の勉強や受験対策をしなくてはならずに切羽詰まる子どもたちがいるのをご存じでしょうか。

そういった子どもたちが行き場をなくしひとりぼっちになってしまわないよう、本人が「来たい」といえば受け入れています。

ー地球っ子教室の取り組みについて詳しく教えてください。


辻:地球っ子教室は毎週土曜日に開催していて、どのタイミングからでも参加できます。

コロナ禍では、対面による教室とオンライン教室の同時開催を始めました。

かながわ県民センターでの教室は13時15分から14時30分まで、オンライン教室は13時30分から14時30分までです。

学校の勉強や友だちづくりの支援とともに日本語を教えるサポートもしています。

というのも、子どもたちは聞いたり話したりするのは割と早く慣れるのですが、学習言語となる読み書きの日本語をきちんと理解できるようになるのは想像以上に時間がかかるんです。

そのため、多くの時間を学校で過ごしているにもかかわらず「日本語がわからないから授業についていけない」「板書を写すことはできても何を書いたのかわかっていない」という子どもは少なくありません。

校長判断で教育委員会に日本語指導員の派遣要請もできますが、指導時間には上限がありますし、限られた時間のなかで日本語を身につけるなんて、できないでしょう。

地球っ子教室は、そういった子どもたちの一助になれたらいいなという想いで続けています。

一人ひとりの日本語レベルにあわせて教材や読み物を選び、日本語でコミュニケーションが取れるようになったら少しずつ教科学習に移っていきます。

また地球っ子教室のなかでは、日本語だけでなく母語を使っても問題ありません。

自分と同じ言葉を使う友だちと一緒に遊んで盛り上がっていることもあります。

けれども、それで構わないと思っています。自分と同じような境遇の仲間と母語で話せることは、安心できるはずですから。

女性スタッフと女の子が勉強をしている画像

コロナ前には、小学校高学年の男の子たち数人が、休み時間にボードゲームをやることもあったのですが、ゲーム中には中国語が飛び交い大盛り上がりしていました。

学校ではなかなか同じ境遇の子どもたちと母語で自由に話すことは難しいですから、そういった時間は大切だと思っています。

また地球っ子教室は、学年が違う子ども同士で学ぶ場にもなります

最近入った小学1年生の子どもは「同じ学校に通う小学3年生の友だちと一緒に勉強したい」と言って、友だち同士のグループで学習することもありましたね。

違う学年の友だちから学べることもあるので、グループづくりのマッチングもさまざまです。


辻:言葉が通じるようになってくると、同じ国同士でなくても一緒に遊べるようになります。

遊びだけでなく、勉強も、フィリピン、アメリカ、中国の女の子たちが一緒に学んでいることもあり、さらに日本語に限らず、ハングルや英語を教えあう姿も見られます。

おしゃれや韓国音楽の趣味が一致して、ペルー・ブラジルルーツの中学3年生の子とアメリカルーツの中学2年生の子が仲良くなっているのは印象的でした。


丸山:ありましたね~。それに関連して、海外と日本の教育制度は違うということも知ってほしいですね。

ペルーの公立小中学校では英語が必修ではないので、日本に来て初めて英語を学ぶ状況になり、苦労しているようです。

高校受験のためにゼロから英語を学んで苦労しているのに、見た目が外国人というだけで「英語は大丈夫だよね」と周囲には思われてしまうんです。

学校では、そういうギャップをわかってもらえないつらさもあるのだろうなと思います。


辻:彼女は教室に来て「私は英語を習っていない。でもスペイン語とポルトガル語ならできる」と言っていたので、私は「英語ができないからダメなんて誰も思っていないからね」と伝えました。

私たち日本人は、「外国の人だから英語ができるだろう」と思って話しかけてしまいがちですが、そうとは限らないんですよね。

誰しも見た目での先入観は持ちがちです。しかし、些細な言葉で傷ついている人がいることを考えたいですね。

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すべての子どもに教育のチャンスと豊かな未来を

男性スタッフと男の子が地球儀を見ながら話している画像

ー今後開催予定のイベントはありますか?


辻:「漢字王決定戦」というゲーム大会を年2回開催していて、次回は10月1日に開催する予定です。

日本語の漢字って難しくて、読み方が変化するし、送りがなもありますよね。また、書き順や画数も学ばなければなりません。

そこで「ゲーム感覚で遊びながら、漢字と親しもう」と、この大会を地球っ子教室内で始めたのですが、もう14年も続いています。

ある小学校の体育館で開催したときには、A4サイズの漢字カードをとるために走り回り、漢字は格闘技だ!と感じる時間でした。

<体を使って遊ぼう>
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/md5/cnt/f536320/p1179090.html


丸山:どなたでも参加できる公開イベント「漢字王決定戦」も開催しています。

12月は寄付月間、ってご存じですか。地球学校は、毎年12月に「寄付月間日本大通実行委員会」として横浜で活動しています。

「漢字王決定戦」への参加をとおして、地球っ子教室の子どもたちの存在を多くの方に知ってもらい、寄付や支援をお願いしています。

自分以外のだれかのために、社会が少しでもよくなるように、一人ひとりが寄付について考える機会をつくることが目的です。

去年の12月のオンライン開催では、地球っ子教室の子どもたちはもちろん、日本全国やアメリカ、ニカラグアなど、各地からオンラインで参加される方がいて、地球規模のイベントとなりました。

2020の漢字王決定戦イベントの様子は、YouTubeをご覧ください。


ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。


辻:日本は子どもの権利条約を批准していて、近々こども家庭庁が設置されます。

子どもたちは、生きる権利・育つ権利・守られる権利・参加する権利をみんな持っているんです。

そのなかで育つ権利とは、いい換えると教育を受けて育つ権利なのですが、残念ながらそこから漏れてしまう外国ルーツの子どもがいます。

私たち地球学校は、来日した外国の子どもを含むすべての子どもたちに、教育を受けるチャンスを持ってほしいと思うんです。

日本語ができないために子どもたちの夢を実現できない、進学が厳しいなどの状況が、早くなくなることを望みます。

学校に通うときに言葉の問題でつまずかないよう、これからも子どもたちをサポートしていくので、私たちの活動に興味のある方は、ぜひご連絡ください!


丸山:今の時代、きっとお子さんのクラスメイトにも、外国ルーツのお友だちがいるのではないかと思います。

外国ルーツといっても、日本で生まれ育った人、小学校から日本に来た人、英語を話せない人など、一人ひとり違うことに思いを馳せていただきたいです。

日本人が一人ひとり違うように、他国の人も多様なんだということを、まずはわかってもらえたらなと思います。

たとえば「もし留学などで我が子が海外で暮らすことになったら、どのような苦労をするだろうか」と想像してみるといいかもしれません。

「多様なルーツの子どもと接することで、自分の子どもの生活も豊かになる」という発想の人が増えたら、日本社会はもっと外国の方に対して優しくなれるのではないでしょうか。

子どもたちが多様性について考えるきっかけを、大人のみなさんからつくってもらえると嬉しいですね。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!



■取材協力:認定NPO法人 地球学校

有田 幸恵
この記事を執筆した執筆者
有田 幸恵

Ameba塾探し 執筆者

幼少期は5歳から小学校6年生まで英会話教室に通う。高校受験時には家庭教師や塾の特別講習で猛勉強し、第一志望に合格。その後、芸能関係の道に進み、ライター業に転身する。エンタメや美容ジャンルの執筆を経験した後、弁護士コンテンツの法律記事に携わったのをきっかけに、読者の役に立つ情報発信を志し、2020年9月から株式会社サイバーエージェントのグループ会社 株式会社CyberOwlで編集者兼ライターとして従事。現在、「Ameba塾探し」で保護者やお子さまの未来に繋がる記事づくりを目指しています。