食の問題解決に取り組むNPO法人「てしおて」を取材!子どものための支援活動とは

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日本財団が2021年にした発表では、日本の約7人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれています。

特に、“子どもの食に関する問題”が懸念されており、この問題を改善しようと多くの団体や民間企業などが立ち上がり、さまざまな取り組みをおこなっています。

鹿児島県の南さつま市で活動しているNPO法人「てしおて」も、子どもの食に関する問題を改善しようと取り組んでいる団体のひとつです。

今回は、NPO法人「てしおて」の崎山 尚子(さきやま ひさこ)さんに、活動内容や子どもへの支援内容について詳しくお話を伺いました。

  1. 子どもの食を支援するNPO法人「てしおて」
  2. 食の提供から学習支援(子どもの居場所作り)までさまざまな活動を実施
  3. 世代を超えた関わり合いから社会性を身につける
  4. 食に困っている人を支援し続ける

子どもの食を支援するNPO法人「てしおて」

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ー本日はよろしくお願いします。まずは、NPO法人「てしおて」の設立経緯や概要についてお聞かせください。

崎山 尚子さん(以下、崎山):「てしおて」の設立経緯として、まず、私が30年前に結婚して東京から鹿児島に移住したことが最初のきっかけのひとつですね。

鹿児島に来たばかりのころは、友達がいないので子育てサークルをつくってみたりして過ごしていたのですが、南さつま市もほかの地方都市と同様に過疎化が進み、田舎の良さでもある世代間交流が減っていき、育児の孤立化や食の貧困など都市部の課題が見え隠れするようになってきたのです。

そこで、新しくなにかしようと考えていたときに、ちょうど“第一次子ども食堂ブーム”が起きていて、「子ども食堂」をやってみたいと思い、地元の女友達と「てしおて」を設立しました。

そのときに、活動への支援や周りからの信頼を得るために「てしおて」をNPO法人として設立し、同時に活動の場所である「てしおて子ども食堂」も立ち上げたんです。

地域のお年寄りから子どもたちが気軽に一緒に食事を楽しめる場所として、2017年に活動をスタートしました。

その後、4年ほど活動をしてみて、子ども食堂の活動だけで本当に食べ物が必要な人に届けられているのだろうかと悩んでいたところ、「フードバンク」の存在を知り、「フードバンク」と子ども食堂を連動させることで、より多くの方々に、様々な方法で“食”を通した支援ができると判断し、2020年3月に、新たに「フードバンクてしおて」事業も立ち上げました。

食の提供から学習支援(子どもの居場所作り)までさまざまな活動を実施

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ー「NPO法人てしおて」がおこなっている活動について、詳しく教えていただけますでしょうか?

崎山:私たちがおこなっている活動は、大きく分けて3つあります。

まず1つめの活動は、メインである「てしおて子ども食堂」ですね。

現在は、新型コロナウイルスの影響により、公民館などで一緒にご飯を食べることはできないので、地元食材をふんだんに使ったお弁当をつくり、予約いただいた方々にテイクアウト方式でお渡ししています。

2つめは、「フードバンクてしおて」の活動です。

「フードバンクてしおて」では、私たちが加入している“全国フードバンク推進協議会”と一緒になって、フードバンクの知名度を上げるための活動「フードバンクこども応援(支援)プロジェクト」をおこなっています。

応援プロジェクトでは、子どもたちが夏休み期間中である8月の毎週木曜日に、子どものいるひとり親世帯の方を対象に、米やお菓子、レトルト食品などの食料を配布しています。

そして、3つめの活動は、国の学習支援事業の一環として“教育が大事である”という概念に基づき、2021年4月から実施している「特別勉強会」です。

「特別勉強会」では、子どもを塾に通わせるための経済的な余裕がない家庭向けの学習支援として、月に1回、子どもの勉強を私たちが見て指導しています。

義務教育の子どもを対象に、午前は小学生、午後は中学生を集めて勉強会をおこない、希望者にはスタッフ手作りの昼食(200円)を提供しています。

子どもたちを集めて勉強会を実施しているのは素晴らしい取り組みですね!

NPO法人「てしおて」が活動拠点にしている鹿児島県には、そのほかにも塾・学習塾があります。

地域の塾を探している方は、ぜひ南さつま市 塾・学習塾 ランキングからチェックしてみてくださいね!

世代を超えた関わり合いから社会性を身につける

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ー「てしおて子ども食堂」ではどのようなプログラムをおこなっていて、参加することでどのようなことが学べるのでしょうか?

崎山:「てしおて子ども食堂」では、コロナ禍になる前は、月に1回、子どもからお年寄りまで幅広い年代の方々が、大きなテーブルを囲んで温かくておいしいご飯を食べていました。

世代を超えて楽しさを分かち合う交流なので、参加した子どもたちは普段あまり関わることのできない大人と接することで、礼儀や社会性などを学ぶことができていたと思います。

折り紙の先生やマッサージの先生を招待して、みんなで一緒になってやり方を教わったりと、和気あいあいと楽しい雰囲気で食事ができていましたね。

ー参加費用や食事内容について詳しく教えてください。

崎山:活動への参加費用は、子どもは100円、中学生や高校生は200円、大人は300円です。

コロナ禍の前は、この金額でバイキング方式の食べ放題をおこなっていました。

料理は、地元の方からいただいた野菜を使用した天ぷらや煮物などが多かったです。

バイキング方式で量は好きなだけ食べられるため、魚のフライを三回もお代わりをする子もいました。

現在はお弁当ですが、魚やお肉の寄付も増えボリュームのある内容になっていると思います。

お茶やレトルト食品などの食材、除菌シートなどをお土産に差し上げています 。

さらに、ひとり親世帯には別でプレゼントを用意して、子どもの人数分のお菓子や果物をあげるようにしています。

食に困っている人を支援し続ける

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ー今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?

崎山:現在は新型コロナウイルスの影響で以前までおこなっていた「食堂」での活動ができなくてもどかしいですが、お弁当の配布を喜んでくれる方も多く、今後も食堂での活動とお弁当配布活動のどちらも続けていきたいと思っています。

コロナ禍になったことで、食堂とお弁当には、それぞれ良い部分があるということがわかりました。

ただ、コロナ渦で新たに「子ども食堂」を始めるケースも増加、支援も増えてきていて「子ども食堂」はある程度認知されてきているようです。

そのため、これからは多くの方に「フードバンク」を認知してもらうための活動が大事になってくると思います。

子ども食堂をしていたときに、「本当にお腹をすかせた子どもがくるのか」「ただ親を甘やかす活動になってしまうのではないか」など、さまざまな意見を頂きました。

しかし「フードバンク」の活動を始めてみて、水道・ガス・電気のない家に住んでいて、家にトイレがないから公園のトイレを使用していたり、そういう生活をしている方が実際にいることを知りました。

鹿児島県では「フードバンク」がまだ普及していないので、私たちが活動すること自体に大きな意味があると思っています。

「子ども食堂」の活動は楽しくできていたのですが、「フードバンク」の活動では、現代社会の貧困問題を目の当たりにしました。

本当に困っている人が身近にたくさんいるんです。ただ、気が付かないだけです。

だからこそ、今後も引き続き、本当に食に困っている方々の力になれるような活動をしていきたいと感じています。

ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

崎山:住んでいる家の近くに「子ども食堂」があったら、ぜひ行ってみてください。悩みや話を聞いてくれると思います。

また、本当に食べるものに困ったら、「フードバンク」に相談してみてください。

もし食べ物に困っていない方は、「フードドライブ」に協力してみてほしいです。

「フードドライブ」は、自宅にある食べ物や自分の家では消費しない食べ物を寄付するボランティア活動です。

寄付していただいた食べ物が、「フードバンク」から食べ物に困っている方々に渡ります。

食べ物に困っていない方は「自分には関係ない」と考えるのではなく、少しでも興味をもってもらえると嬉しいですね。

ぜひ親子でボランティア活動を体験して、子どものうちから自然にボランティアできるようになれば良いなと思います。

ー本日は貴重なお時間をありがとうございました!

■取材協力:
NPO法人てしおて

工藤 智也
この記事を執筆した執筆者
工藤 智也

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

「テラコヤプラス by Ameba」の編集兼ライター。子どものころは勉強が苦手で、好きな教科と嫌いな教科でテストの点数が極端に違ったタイプ。国語が好きで、本ばかり読んでいた学生時代。中学校で塾に通い、その時に初めて塾で勉強すると成績が伸びることを実感。苦手な数学の成績が上がったことは、勉強に対する考え方が変わった良いきっかけに。この経験を活かし、勉強することが苦手な人が、少しでも勉強を好きになり前向きな塾選びができるようなサイトを目指します。